老健施設における結核の外来性再感染と思われる集団発生について

一度結核に感染あるいは発病した人が, 外来性再感染によって再度感染発病することは稀であると考えられている。私どもは, ある老健施設で感染源も含め27例の結核集団感染を経験した。感染源は, 同施設内の82歳の女性で, 空洞性病変が認められ, 喀痰検査ではGaffky8号, 培養陽性 (+++) であった。 喀痰中の分離菌について, 感染源も含め19例でRFLP分析を行うことができたが, 18例は同一パターンで, 感染源からの集団感染であることが示された。これらの症例の中, 13例が私どもの病院に入院したが, 感染源を除く12例 (男3例, 女9例) は, 平均年齢が80.6歳 (67~89歳)...

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Published in結核 Vol. 77; no. 5; pp. 401 - 408
Main Authors 近藤, 有好, 桶谷, 典弘, 桑原, 克弘, 丸山, 佳重, 宮尾, 広美, 斉藤, 泰晴, 丸山, 倫夫, 大野, みち子, 和田, 光一, 土屋, 俊晶
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 一般社団法人 日本結核病学会 15.05.2002
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Summary:一度結核に感染あるいは発病した人が, 外来性再感染によって再度感染発病することは稀であると考えられている。私どもは, ある老健施設で感染源も含め27例の結核集団感染を経験した。感染源は, 同施設内の82歳の女性で, 空洞性病変が認められ, 喀痰検査ではGaffky8号, 培養陽性 (+++) であった。 喀痰中の分離菌について, 感染源も含め19例でRFLP分析を行うことができたが, 18例は同一パターンで, 感染源からの集団感染であることが示された。これらの症例の中, 13例が私どもの病院に入院したが, 感染源を除く12例 (男3例, 女9例) は, 平均年齢が80.6歳 (67~89歳) で, 胸部X線では結核性病変を認め, 喀痰の塗抹, PCR, 培養検査などでM.tuberculosisが証明された。 集団感染発生時 (1995年) のわが国における年齢80歳の結核既感染率は約80%と推定されるので, これらの症例の大部分は再感染による発病と考えられた。全例に老人性痴呆やその他の合併症等があり, 寝たきりで, 低栄養状態であった。また, 貧血, 低アルブミン血症, リンパ球の減少なども大部分の症例で認められた。これらの合併症による低栄養状態が, 再感染の一因であると思われた。
ISSN:0022-9776
1884-2410
DOI:10.11400/kekkaku1923.77.401