高齢者の貧血に関する研究自宅生活群と老人ホーム群の血清鉄, 総鉄結合能, 血清フェリチンの比較

北海道内の農漁村で自宅生活をする70代の高齢者283名 (男171名, 女112名) と, 札幌市内の老人ホームで生活する70代の高齢者81名 (男28名, 女53名) について未梢血検査, 鉄代謝検査を施行した. その結果, 自宅生活群の赤血球数, ヘモグロビン値, ヘマトクリット値の平均は, 男・女でそれぞれ469×104/μl vs 439×104/μl, 14.6g/dl vs 13.3g/dl, 44.3% vs 40.6%であり, 老人ホーム群のそれは男女でそれぞれ421×104/μl vs 390×104/μl, 13.8g/dl vs 12.6g/dl, 39.9%vs 36....

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 27; no. 1; pp. 28 - 32
Main Authors 前, 吉俊, 黒沢, 光俊, 今村, 光男, 大原, 行雄, 宮崎, 保, 桜田, 恵右
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.01.1990
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.27.28

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Summary:北海道内の農漁村で自宅生活をする70代の高齢者283名 (男171名, 女112名) と, 札幌市内の老人ホームで生活する70代の高齢者81名 (男28名, 女53名) について未梢血検査, 鉄代謝検査を施行した. その結果, 自宅生活群の赤血球数, ヘモグロビン値, ヘマトクリット値の平均は, 男・女でそれぞれ469×104/μl vs 439×104/μl, 14.6g/dl vs 13.3g/dl, 44.3% vs 40.6%であり, 老人ホーム群のそれは男女でそれぞれ421×104/μl vs 390×104/μl, 13.8g/dl vs 12.6g/dl, 39.9%vs 36.7%であった. 両群ともに有意に男女差を認め, また老人ホーム群は男女とも自宅生活群に比し有意に低値を示した. 自宅生活群の値は健常成人の値とほとんど差を認めなかった. 鉄代謝検査の結果では, 自宅生活群の血清鉄値と血清フェリチン値は男・女でそれぞれ95.6μg/dl vs 84.8μg/dl, 50.2ng/ml vs 42.6ng/mlであり, 老人ホーム群のそれは男・女でそれぞれ74.2μg/dl vs 58.6μg/dl, 98.8ng/ml vs 69.1ng/mlであった. 老人ホーム群の血清鉄値は, 自宅生活群に比し有意に低値を示したが, 血清フェリチン値では老人ホーム群の値が自宅生活群に比し有意に高値を示した. これらの結果より, 高齢者において非活動的な生活様式は, より貧血を呈しやすいと考えられ, その原因は潜在する炎症等によることが推察された. 高齢者の貧血は, 基礎疾患に続発する二次性貧血が多く, その原因疾患の検索を怠ってはならず, 明らかな原因が不明であっても臨床症状, 所見ならびに検査値等の変化に注意して早期発見に努めることが大切である.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.27.28