VIII.肛門部腫瘍性病変の特集のまとめ

この特集には肛門周囲皮膚や肛門管の腫瘍性病変に対する診断と治療に関する貴重な論文が集められている.肛門周辺の腫瘍性病変には良性腫瘍と悪性腫瘍が存在するが,本邦ではこれらは何れも稀な疾患であって,1人の医師が数多く経験することは少ない.良性疾患ではBowen病,Paget病が良く知られているが,一定のバリアーを越えると悪性疾患となる.私どもの施設での肛門管悪性腫瘍の頻度は全大腸悪性疾患の2.2%を占めたが,これは丁度,大腸癌研究会の全国集計とぴったり一致していた. 疾患別に見ると,通常の腺癌が60%,扁平上皮癌が15%,痔瘻癌が15%と,大腸肛門病の専門施設の特徴を示していた.その他,Paget...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 61; no. 10; pp. 1004 - 1009
Main Author 松田, 保秀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2008
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Summary:この特集には肛門周囲皮膚や肛門管の腫瘍性病変に対する診断と治療に関する貴重な論文が集められている.肛門周辺の腫瘍性病変には良性腫瘍と悪性腫瘍が存在するが,本邦ではこれらは何れも稀な疾患であって,1人の医師が数多く経験することは少ない.良性疾患ではBowen病,Paget病が良く知られているが,一定のバリアーを越えると悪性疾患となる.私どもの施設での肛門管悪性腫瘍の頻度は全大腸悪性疾患の2.2%を占めたが,これは丁度,大腸癌研究会の全国集計とぴったり一致していた. 疾患別に見ると,通常の腺癌が60%,扁平上皮癌が15%,痔瘻癌が15%と,大腸肛門病の専門施設の特徴を示していた.その他,Paget病·Pagetoid現象,悪性黒色腫などの存在に充分注意が必要である.論文には,本邦の全国的集計,臨床的経験,病理·解剖的観点,内視鏡的観点,化学療法結果を含めた内容,痔瘻癌,GISTなど間葉系細胞由来腫瘍の診断治療,最後に全体のまとめがある.この特集には最新の情報も盛り込まれているので,臨床現場で大いに活用できると思う.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.61.1004