当院における下大静脈フィルター留置の治療成績

下大静脈フィルター(inferior vena cava; IVC)は, 深部静脈血栓症(deep venous thrombosis; DVT)の急性期, および慢性期に肺塞栓症を予防するため, 臨床的に使用されているが, その適応については慎重に考慮する必要がある. 今回, 当院で下大静脈フィルターを留置した症例を後ろ向きに追跡調査した. 症例は, 2003年1月から2010年12月までに当院で下大静脈フィルターを留置した連続70症例のうち追跡可能であった52症例(永久留置39例, 非永久留置13例) で, 平均観察期間は33カ月であった. 抗凝固療法が継続されていた症例は, 全体の30例...

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Published in心臓 Vol. 44; no. 6; pp. 677 - 682
Main Authors 櫻木, 奈央, 浅田, 聡, 橋本, 哲也, 今井, 幹昌, 中川, 裕介, 塚本, 正樹, 阪本, 健三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2013
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.44.677

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Summary:下大静脈フィルター(inferior vena cava; IVC)は, 深部静脈血栓症(deep venous thrombosis; DVT)の急性期, および慢性期に肺塞栓症を予防するため, 臨床的に使用されているが, その適応については慎重に考慮する必要がある. 今回, 当院で下大静脈フィルターを留置した症例を後ろ向きに追跡調査した. 症例は, 2003年1月から2010年12月までに当院で下大静脈フィルターを留置した連続70症例のうち追跡可能であった52症例(永久留置39例, 非永久留置13例) で, 平均観察期間は33カ月であった. 抗凝固療法が継続されていた症例は, 全体の30例(58%), 永久留置例のうち25例(64%), 非永久留置症例のうち5例(38%)であった. フィルター留置に関連した死亡はなく, 肺塞栓再発もみられなかった. 永久留置例のうち2例でフィルターによる無症候の静脈穿孔が認められ, 1例で抗凝固療法中止後にDVT再発がみられたが, 抗凝固療法再開により消失した. 非永久留置例では合併症は認めなかった. 今回の短期間の検討では, フィルター永久留置症例において重篤な合併症はみられなかったが, 長期にわたる経過観察が必要と考えられた. また, 永久留置の場合, 抗凝固療法の継続によりDVTの再発を減少させることができる可能性があると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.44.677