典型的な臨床症状を示さない侵襲性アスペルギルス上顎洞炎の診断に in situ hybridization (ISH) 法を用いた 1 例

患者は悪性リンパ腫の60歳男性で、平成 14 年 7 月に末梢血幹細胞移植を施行した。移植後の GVHD で治療中の 147 日目に β-Dグルカン値が 58.2 pg/mlと軽度上昇し 37.5℃ の発熱も認められた。移植後 165 日目に、右上小臼歯部の歯痛で歯科口腔外科を受診、顎顔面の腫脹・皮膚歯肉発赤・鼻症状などの臨床所見はなく、上顎洞・顎骨レントゲン写真においても右上小臼歯根尖病巣を認めるのみであった。167 日目に、局所麻酔下に歯根尖病巣の試験切開を行ったところ、上顎洞骨壁の壊死を認めたため、上顎洞根本手術に変更して腐骨と不良肉芽除去した。摘出組織の迅速検査で真菌の増殖が確認され、...

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Published in日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 p. 168
Main Authors 村山, そう明, 三上, 襄, 菅田, 辰海, 明見, 能成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医真菌学会 2005
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ISSN0916-4804
DOI10.11534/jsmm.49.0.168.0

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Summary:患者は悪性リンパ腫の60歳男性で、平成 14 年 7 月に末梢血幹細胞移植を施行した。移植後の GVHD で治療中の 147 日目に β-Dグルカン値が 58.2 pg/mlと軽度上昇し 37.5℃ の発熱も認められた。移植後 165 日目に、右上小臼歯部の歯痛で歯科口腔外科を受診、顎顔面の腫脹・皮膚歯肉発赤・鼻症状などの臨床所見はなく、上顎洞・顎骨レントゲン写真においても右上小臼歯根尖病巣を認めるのみであった。167 日目に、局所麻酔下に歯根尖病巣の試験切開を行ったところ、上顎洞骨壁の壊死を認めたため、上顎洞根本手術に変更して腐骨と不良肉芽除去した。摘出組織の迅速検査で真菌の増殖が確認され、真菌性上顎洞炎の診断下に、静注ミカファンギン、経口イトラコナゾール、静注アムフォテリシン B の投与を開始した。組織標本は、Aspergillus 特異的 ALP プローブを用いた (ISH) 法で解析され、術後 3 日目にアスペルギルス上顎洞炎の診断を得た。一方、培養では、アスペルギルス ( Aspergillus fumigatus )が同定されたのは術後 8 日目であり、迅速性で ISH に劣ることが判明した。181 日目には β-Dグルカン値が 7.8 pg/ml に改善し、上顎洞 CT においても病変の残存は認められなかった。以上より、迅速性と確実性において、ISH 法は上顎洞アスペルギルス症の診断に有用であったと考える。
Bibliography:P-128
ISSN:0916-4804
DOI:10.11534/jsmm.49.0.168.0