ガラスエゾエンザ属(腹足綱:有肺類:エゾエンザ科)の1新種及び本属各種の分布と生息環境のつながり

トルコのイスパルタ郡ウルボール町で発見した新種Vitrea politissimaを記載する。殻の形態から,本種は,本属の中で殻が大きく,殻臍が広いVitrea ernesti, V. ephesina, V. klemmiおよびV. sossellaiと近縁であると推定される。既知の分布情報を用いて本属の生物地理を解析した結果,地上に露出した岩石やその根元の地面に生息する岩石性の種は相対的に狭い地域に分布し,分布域が広い種は岩石性ではないことがわかった。岩石性の種の分布が狭いのは,生息に必要となる岩石が狭い範囲にしかないからではなく,分散力が低いからであると推定される。生物の体系,生物相,生...

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Published inVenus (Journal of the Malacological Society of Japan) Vol. 73; no. 1-2; pp. 41 - 50
Main Authors Páll-Gergely, Barna, 浅見, 崇比呂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本貝類学会 2015
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Summary:トルコのイスパルタ郡ウルボール町で発見した新種Vitrea politissimaを記載する。殻の形態から,本種は,本属の中で殻が大きく,殻臍が広いVitrea ernesti, V. ephesina, V. klemmiおよびV. sossellaiと近縁であると推定される。既知の分布情報を用いて本属の生物地理を解析した結果,地上に露出した岩石やその根元の地面に生息する岩石性の種は相対的に狭い地域に分布し,分布域が広い種は岩石性ではないことがわかった。岩石性の種の分布が狭いのは,生息に必要となる岩石が狭い範囲にしかないからではなく,分散力が低いからであると推定される。生物の体系,生物相,生態に関する研究の発展により地理分布のパターンとその形成プロセスを理解する上での有益な知見が得られることを本研究は例示する。
ISSN:1348-2955
2189-7697
DOI:10.18941/venus.73.1-2_41