接合菌類(ムコール菌)同定を目的としたグロコット染色―熱処理および過ヨウ素酸による酸化についての検討

真菌などの組織内病原体を証明する代表的な特殊染色の一つにグロコット染色があるが,菌壁が薄いムコール菌は酸化力の強いクロム酸処理では染色性が弱く判別が困難であった。以前,われわれは,クロム酸に変えて比較的酸化力の弱い過ヨウ素酸処理を行うことでムコール菌の染色性を増強させることを見出し報告した。加えて,前処理として免疫組織化学染色で多用される熱処理を行うことで結合組織の共染が抑制されることも報告した。今回,われわれは,症例を増やすべく,解剖で得られた各真菌症を新たに組織マイクロアレイブロックに作製し,前処理を従来のクロム酸と過ヨウ素酸で,また,共染を抑えるための熱処理をpH別に再度比較検討した。さ...

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Bibliographic Details
Published in医学検査 Vol. 71; no. 1; pp. 53 - 60
Main Authors 椙村, 春彦, 五十嵐, 久喜, 川端, 弥生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会 25.01.2022
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ISSN0915-8669
2188-5346
DOI10.14932/jamt.21-51

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Summary:真菌などの組織内病原体を証明する代表的な特殊染色の一つにグロコット染色があるが,菌壁が薄いムコール菌は酸化力の強いクロム酸処理では染色性が弱く判別が困難であった。以前,われわれは,クロム酸に変えて比較的酸化力の弱い過ヨウ素酸処理を行うことでムコール菌の染色性を増強させることを見出し報告した。加えて,前処理として免疫組織化学染色で多用される熱処理を行うことで結合組織の共染が抑制されることも報告した。今回,われわれは,症例を増やすべく,解剖で得られた各真菌症を新たに組織マイクロアレイブロックに作製し,前処理を従来のクロム酸と過ヨウ素酸で,また,共染を抑えるための熱処理をpH別に再度比較検討した。さらに,ムコール菌に特異的とされるRhizopus抗体を用いて検出率を比較した。ムコール菌はすべて,過ヨウ素酸処理することで染色性の大きな改善が認められた。また,熱処理は,どのpHにおいても結合組織の共染を防ぐことができた。一方,ムコール菌のRhizopus抗体による免疫染色での検出率は70%(7/10例)であり,染色性も非常に弱かった。グロコット染色におけるムコール菌検出に最適な酸化剤は過ヨウ素酸であり,熱処理を行うことで結合組織,血液細胞等への共染が抑制され,菌体の鑑別が容易になった。また,Rhizopus 抗体も染色性が弱く検出率も100%に及ばないことからも,この方法は大変有用であると考える。
ISSN:0915-8669
2188-5346
DOI:10.14932/jamt.21-51