日本語のかき混ぜ文の主要部前と主要部駆動処理に関する視線計測研究

動詞を読む前の予測処理がかき混ぜ文の処理に影響すると報告されている。しかし,これらの研究は,文の同じ位置で名詞を比較しておらず,名詞の種類も異なっていた。そこで,高使用頻度の人名を文の同じ位置に配置して,他動詞の単文とそれらを埋め込んだ複文の2つの実験で,短距離・長距離のかき混ぜを句ごとに視線計測した。NP-ACC(ヲ)とNP-NOM(ガ)が連続して現れる場合は,2つ目の名詞句のNP-NOM(ガ)の部分で,両実験のかき混ぜ文の通過時間が有意に長くなった。これは,埋語補充解析が始まることを示唆している。しかし,その後,動詞を読んでからの再読時間と読み戻り頻度が,埋語が想定される付近の名詞句を中心...

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Published in言語研究 Vol. 155; pp. 35 - 63
Main Author 玉岡, 賀津雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本言語学会 2019
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Summary:動詞を読む前の予測処理がかき混ぜ文の処理に影響すると報告されている。しかし,これらの研究は,文の同じ位置で名詞を比較しておらず,名詞の種類も異なっていた。そこで,高使用頻度の人名を文の同じ位置に配置して,他動詞の単文とそれらを埋め込んだ複文の2つの実験で,短距離・長距離のかき混ぜを句ごとに視線計測した。NP-ACC(ヲ)とNP-NOM(ガ)が連続して現れる場合は,2つ目の名詞句のNP-NOM(ガ)の部分で,両実験のかき混ぜ文の通過時間が有意に長くなった。これは,埋語補充解析が始まることを示唆している。しかし,その後,動詞を読んでからの再読時間と読み戻り頻度が,埋語が想定される付近の名詞句を中心に観察された。意味的な手掛かりが欠如する場合には,動詞の情報に準拠した主要部駆動処理に強く依存することが示された。手掛かりの有無によって,主要部前処理か主要部駆動処理かの依存の度合いが異なってくると考えられる。
ISSN:0024-3914
2185-6710
DOI:10.11435/gengo.155.0_35