厚膜分生子形成を認めた肺接合菌症

背景:接合菌症は他の深在性真菌症に比べて多くはないが、宿主に多発性の梗塞を生じ急激に死に至らしめる重大な糸状菌感染症である。病理組織学的に接合菌症では隔壁のない特徴的な菌糸が観察されるが、それ以外の真菌要素を見ることは極めて稀である。今回肺接合菌症の組織中に厚膜分生子を認めた症例を報告する。 症例: 72 歳、男性。今回の入院より 7 カ月前に関節リウマチと診断され通院治療を受けていた。4 カ月前に間質性肺炎のため入院しステロイドパルス療法およびサイクロスポリンの投与を受け、2 週間前に一旦退院した。今回再度間質性肺炎で入院し、ステロイドパルス療法およびサイクロスポリン投与が入院後 7 日目か...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 p. 172
Main Author 木村, 雅友
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医真菌学会 2005
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-4804
DOI10.11534/jsmm.49.0.172.0

Cover

More Information
Summary:背景:接合菌症は他の深在性真菌症に比べて多くはないが、宿主に多発性の梗塞を生じ急激に死に至らしめる重大な糸状菌感染症である。病理組織学的に接合菌症では隔壁のない特徴的な菌糸が観察されるが、それ以外の真菌要素を見ることは極めて稀である。今回肺接合菌症の組織中に厚膜分生子を認めた症例を報告する。 症例: 72 歳、男性。今回の入院より 7 カ月前に関節リウマチと診断され通院治療を受けていた。4 カ月前に間質性肺炎のため入院しステロイドパルス療法およびサイクロスポリンの投与を受け、2 週間前に一旦退院した。今回再度間質性肺炎で入院し、ステロイドパルス療法およびサイクロスポリン投与が入院後 7 日目から 3 日間行われた。入院後 12 日目からは感染症も疑われ抗生剤およびフルコナゾールが投与された。呼吸状態は一旦改善したが、再び悪化し 81 日目に呼吸不全で死亡し剖検された。 病理学的所見:右肺上葉の胸膜直下に出血で囲まれた壊死病巣が見られ中心部は空洞化していた。顕微鏡的に、壊死部付近の中等大動脈に血栓が見られた。血栓内および壊死部辺縁に隔壁のない不規則分岐をした菌糸が多数認められ、接合菌の特徴を有していた。空洞に面した壊死部では菌糸の他に、壁の厚い不整な菌糸状あるいは類円形の真菌要素が認められた。この真菌要素が菌糸細胞壁の内側に形成されたものも確認された。これら形態的特徴は厚膜分生子にあたると考えられた。接合菌症の組織に厚膜分生子が認められたものはこれまで 6 例しか報告がない。
Bibliography:P-132
ISSN:0916-4804
DOI:10.11534/jsmm.49.0.172.0