和歌山県中部中新統産のリュウグウオキナエビスの1新亜種化石

和歌山県東牟婁郡串本町植松に露出する中部中新統熊野層群敷屋層の礫質中粒砂岩からオキナエビス類化石が産出した。これらは下部浅海~漸深海帯の貝類(自生のLucinomaのほかにConchocele, Cardiomya等)と共産した。上に重なる石灰岩と砂岩の互層からは暖海性大型有孔虫Nephrolepidina japonica(Yabe)が多産する。さらにその上の石灰質砂岩から,いわゆる第一瀬戸内区と共通する上部浅海性貝類が多産し,大型有孔虫Nephrolepidina japonica(Yabe)を伴う。本オキナエビス類化石はこの属としてはやや小型であり,切れ込みが体層の約半周を占めること,臍...

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Published inVenus (Journal of the Malacological Society of Japan) Vol. 74; no. 1-2; pp. 27 - 34
Main Authors 冨田, 進, 左向, 幸雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本貝類学会 2016
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Summary:和歌山県東牟婁郡串本町植松に露出する中部中新統熊野層群敷屋層の礫質中粒砂岩からオキナエビス類化石が産出した。これらは下部浅海~漸深海帯の貝類(自生のLucinomaのほかにConchocele, Cardiomya等)と共産した。上に重なる石灰岩と砂岩の互層からは暖海性大型有孔虫Nephrolepidina japonica(Yabe)が多産する。さらにその上の石灰質砂岩から,いわゆる第一瀬戸内区と共通する上部浅海性貝類が多産し,大型有孔虫Nephrolepidina japonica(Yabe)を伴う。本オキナエビス類化石はこの属としてはやや小型であり,切れ込みが体層の約半周を占めること,臍孔が深く大きく開くことからEntemnotrochus Fischer, 1885アダンソンオキナエビス属であると考えられる。この化石は現生のE. rumphii(Schepman)リュウグウオキナエビスとは近い関係にあり,基本的な特徴がよく一致するが,より小型で,切れ込み帯の位置がやや低く,切れ込み帯より上の螺肋は17本で同サイズの殻と比べて多いので異なる。それ以外の形質はほぼ一致していることから祖先的な新亜種E. rumphii kushimotoensis n. subsp.として記載した。アダンソンオキナエビス属の日本の中新統の化石記録は,静岡県修善寺の中部中新統湯ヶ島層群からE. ozakii Kase & Katayamaと千葉県鋸山の最上部中新統三浦層群千畑層からE. shikamai Kanieが知られる。串本産化石E. rumphii kushimotoensis n. subsp.は,E. ozakiiとは,小さな頂角,より幅広い切れ込み帯,螺層上の上方の螺肋が少ない等で異なり,E. shikamaiとは,より小さな殻と,より狭い切れ込み帯と切れ込み帯の位置がやや低い等で異なる。台湾の中新統からE. panchangwui LinとE. siuyingae Linが報告されているが,前者とは,大きな頂角と低い螺塔を持つこと,後者とは切れ込み帯の位置が螺層中央より少し低い点で類似するが,小さな頂角と高い螺塔をもち,切れ込み帯より上の螺肋が6本であり,本亜種が17本であるので,明らかに区別できる。
ISSN:1348-2955
2189-7697
DOI:10.18941/venus.74.1-2_27