痴呆老人のMRI撮影時におけるフルニトラゼパム前処置

痴呆患者の診断に頭部MRIは有用な検査であるが, 体動によりアーチファクトが生じるため適切な前処置が必要となる. そこで今回, benzodiazepine 系睡眠導入剤の flunitrazepam による前処置を試みた. 対象は, 京都東山老年サナトリウム・老人性痴呆疾患治療病棟に入院中の痴呆患者108名である. 患者の年齢は, 64歳から95歳で平均81歳であった. 性別は女性76名, 男性32名で, 平均体重はそれぞれ37kgと48kgであった. 方法としては, 20倍希釈した本剤をMRI撮影直前に緩徐に静注し, 入眠した時点で注入を止め, 投与量を調べた. 結果は, 一人あたり平均0...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 33; no. 1; pp. 7 - 11
Main Authors 森, 敏, 高倉, 幸次, 酒井, 泰一, 赤木, 博, 平川, 誠, 中島, 健二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.01.1996
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Summary:痴呆患者の診断に頭部MRIは有用な検査であるが, 体動によりアーチファクトが生じるため適切な前処置が必要となる. そこで今回, benzodiazepine 系睡眠導入剤の flunitrazepam による前処置を試みた. 対象は, 京都東山老年サナトリウム・老人性痴呆疾患治療病棟に入院中の痴呆患者108名である. 患者の年齢は, 64歳から95歳で平均81歳であった. 性別は女性76名, 男性32名で, 平均体重はそれぞれ37kgと48kgであった. 方法としては, 20倍希釈した本剤をMRI撮影直前に緩徐に静注し, 入眠した時点で注入を止め, 投与量を調べた. 結果は, 一人あたり平均0.008mg/kgで睡眠の導入と検査中の鎮静が果たされ, 呼吸停止等の副作用は見られなかった. 今回決定した投与量は, 成人を対象とした従来の報告に比べるとはるかに少ない. 高齢者は成人と比較すると低体重であり, 今回の結果が示すように体重あたりの投与量も少ないため, 投与絶対量はきわめて少なくなる. flunitrazepam 静注は, 痴呆老人のMRI撮影時の有用かつ安全な前処置であるが, 重篤な副作用を避けるためには, i) 検査前に体重を測定し投与量を決める, ii) 本剤を希釈して用いる, iii) 投与を一時中断し入眠するかどうかしばらく様子を見るなどして, 投与量を必要最小限に留めなければならない.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.33.7