膀胱自然破裂の1手術例 本邦68例の検討

非外傷性の膀胱自然破裂は比較的まれな病態とされる。今回われわれは放射線照射後の神経因性膀胱炎に起因するとみられる膀胱自然破裂の1手術例を経験した。症例は68歳の女性,下腹部痛を主訴に来院した。23年前に子宮頸癌に対して広汎子宮全摘術・放射線療法を受けた。来院2時間後に腹痛の急激な増悪と白血球減少・アシドーシスの出現を認め,腹部造影CTでは腹水の出現を認めた。このため消化管穿孔または絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行したところ,膀胱頂部に穿孔を認め,同部を縫合閉鎖し手術を終了した。自験例を含む膀胱自然破裂68例の本邦報告例の検討から,膀胱自然破裂は従来考えられていたほどまれではなく,放射線...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 36; no. 1; pp. 147 - 151
Main Authors 那須, 亨, 山本, 基, 出口, 真彰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2016
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.36.147

Cover

More Information
Summary:非外傷性の膀胱自然破裂は比較的まれな病態とされる。今回われわれは放射線照射後の神経因性膀胱炎に起因するとみられる膀胱自然破裂の1手術例を経験した。症例は68歳の女性,下腹部痛を主訴に来院した。23年前に子宮頸癌に対して広汎子宮全摘術・放射線療法を受けた。来院2時間後に腹痛の急激な増悪と白血球減少・アシドーシスの出現を認め,腹部造影CTでは腹水の出現を認めた。このため消化管穿孔または絞扼性イレウスの診断で緊急開腹手術を施行したところ,膀胱頂部に穿孔を認め,同部を縫合閉鎖し手術を終了した。自験例を含む膀胱自然破裂68例の本邦報告例の検討から,膀胱自然破裂は従来考えられていたほどまれではなく,放射線照射の既往を有する患者が多いことが判明した。特徴的な所見に乏しい本症は,急性腹症患者の鑑別疾患の一つに加えておくべきで,診断治療には自科の考えにとらわれない,横断的な視点が必要である。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.36.147