気腫性膀胱炎 試験開腹に至った一症例と文献的考察

気腫性膀胱炎は膀胱壁内にガスが貯留する比較的まれな尿路感染症である。症例は59歳女性。全身浮腫を主訴に近医を受診し,腸管穿孔疑いのため救急搬送された。来院時,著明な下肢浮腫と糖尿病性壊疽を認めたが腹部所見は異常なかった。血液検査では白血球28,060/mm3,HbA1c 14.3 mg/dLであった。腹部CTで骨盤腔に腹水とガスを認めたが,膀胱壁内限局性ガスと遊離ガスの判別が困難であった。そこで膀胱鏡検査を行い,嚢胞状の膀胱壁を認め気腫性膀胱炎と診断した。腹水貯留と糖尿病による腹部症状鈍麻の疑念から腹膜炎を否定できず試験開腹したが,異常所見はなかった。気腫性膀胱炎に対しては尿道カテーテルによる...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 32; no. 3; pp. 671 - 674
Main Authors 杉本, 和彦, 森本, 雅徳, 田中, 公章, 石原, 潤子, 村田, 厚夫, 市来, 玲子, 原田, 大輔, 斉坂, 雄一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.03.2012
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.32.671

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Summary:気腫性膀胱炎は膀胱壁内にガスが貯留する比較的まれな尿路感染症である。症例は59歳女性。全身浮腫を主訴に近医を受診し,腸管穿孔疑いのため救急搬送された。来院時,著明な下肢浮腫と糖尿病性壊疽を認めたが腹部所見は異常なかった。血液検査では白血球28,060/mm3,HbA1c 14.3 mg/dLであった。腹部CTで骨盤腔に腹水とガスを認めたが,膀胱壁内限局性ガスと遊離ガスの判別が困難であった。そこで膀胱鏡検査を行い,嚢胞状の膀胱壁を認め気腫性膀胱炎と診断した。腹水貯留と糖尿病による腹部症状鈍麻の疑念から腹膜炎を否定できず試験開腹したが,異常所見はなかった。気腫性膀胱炎に対しては尿道カテーテルによるドレナージと抗生剤の保存的治療で気腫は軽快した。本邦で気腫性膀胱炎の報告例は56症例あるが,試験開腹に至った症例報告はなく,本報告が糖尿病患者における腹膜炎所見をかんがみるうえでの参考となれば幸いである。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.32.671