損害保険のための日本全域洪水リスク評価モデルの開発(2):リスク評価モデルの構築と適用例

本論文では,洪水リスクを確率論的に評価する枠組みについて示す。本モデルの特徴は,次の3点である。a)洪水リスクを年間期待損害額と損害額超過確率カーブという指標で算出できること,b)降雨流出と洪水氾濫を一体的に計算する降雨流出・洪水氾濫モデルを用いること,c)降雨の時空間分布と堤防決壊の有無による洪水災害の不確実性と,財物の脆弱性の持つ不確実性を考慮すること。本モデルの適用例として,製造業の事業所資産に対する洪水リスクを評価し,モデルの有用性を示した。本モデルで推定した製造業事業所資産の年間期待被害額は,水害統計調査から推定した製造業事業所資産の10年間平均被害額と概ね一致することを示した。本モ...

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Published in自然災害科学 Vol. 37; no. 2; pp. 191 - 203
Main Authors 長野, 智絵, 津守, 博通, 稲村, 友彦, 佐野, 肇, 小林, 健一郎, 佐山, 敬洋, 寶, 馨
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本自然災害学会 2019
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Summary:本論文では,洪水リスクを確率論的に評価する枠組みについて示す。本モデルの特徴は,次の3点である。a)洪水リスクを年間期待損害額と損害額超過確率カーブという指標で算出できること,b)降雨流出と洪水氾濫を一体的に計算する降雨流出・洪水氾濫モデルを用いること,c)降雨の時空間分布と堤防決壊の有無による洪水災害の不確実性と,財物の脆弱性の持つ不確実性を考慮すること。本モデルの適用例として,製造業の事業所資産に対する洪水リスクを評価し,モデルの有用性を示した。本モデルで推定した製造業事業所資産の年間期待被害額は,水害統計調査から推定した製造業事業所資産の10年間平均被害額と概ね一致することを示した。本モデルは洪水リスクを定量的に評価することができるため,損害保険会社だけでなく自治体や企業の洪水リスクマネジメントにも活用できるものと考えられる。
ISSN:0286-6021
2434-1037
DOI:10.24762/jndsj.37.2_191