葉アポプラスト(細胞壁)に存在する抗酸化性アスコルビン酸はオゾンをどこまで解毒できるのか?―(I) 化学反応を伴ったガス拡散移動に基づいたシミュレーションモデル

地表付近のオゾン濃度は世界中で農作物と森林樹木にとって最も大きな脅威である。オゾンは気孔を通して植物葉に吸収され、細胞壁の溶液に溶け、細胞膜と細胞質基質に到達し、そこで様々な細胞組成物を酸化し毒性を発揮する。細胞壁(アポプラストともいう)の溶液は抗酸化性のアスコルビン酸(電荷を持たない中性のアスコルビン酸とアスコルビン酸イオンの両者の集合)を含有し、オゾンの酸化的攻撃に対する最初の防御バリヤーとして作動する。Plöchl et al. (Planta, 210, 454–467 (2000))は、細胞壁に存在するアスコルビン酸イオン(ASC-)によるオゾン解毒の数学モデルを提案した。彼らのモデ...

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Published in大気環境学会誌 Vol. 54; no. 3; pp. 113 - 127
Main Authors 青木, 一幸, 野内, 勇, 小林, 和彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 大気環境学会 10.05.2019
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ISSN1341-4178
2185-4335
DOI10.11298/taiki.54.113

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Summary:地表付近のオゾン濃度は世界中で農作物と森林樹木にとって最も大きな脅威である。オゾンは気孔を通して植物葉に吸収され、細胞壁の溶液に溶け、細胞膜と細胞質基質に到達し、そこで様々な細胞組成物を酸化し毒性を発揮する。細胞壁(アポプラストともいう)の溶液は抗酸化性のアスコルビン酸(電荷を持たない中性のアスコルビン酸とアスコルビン酸イオンの両者の集合)を含有し、オゾンの酸化的攻撃に対する最初の防御バリヤーとして作動する。Plöchl et al. (Planta, 210, 454–467 (2000))は、細胞壁に存在するアスコルビン酸イオン(ASC-)によるオゾン解毒の数学モデルを提案した。彼らのモデルは、(1) 大気から細胞質基質までに至る反応を伴った拡散移動、(2)細胞質基質内におけるデヒドロアスコルビン酸(オゾンとASC-との反応で生じたアスコルビン酸酸化物)のASC-の再生産とそのアポプラストへの補充、(3) 細胞器官間でのpHに依存したASC-の濃度分布、というものである。著者らはPlöchl et al. 論文の数式を詳細に検討し、原文中のいくつかの誤りを修正するとともに、数式の導き方を分かりやすく書き直した。
ISSN:1341-4178
2185-4335
DOI:10.11298/taiki.54.113