葉アポプラスト(細胞壁)に存在する抗酸化性アスコルビン酸はオゾンをどこまで解毒できるのか?―(II) Microsoft Excelを用いたプログラムとシミュレーション

前報で解説した数式モデルをMicrosoft Excelを用いて記述し、細胞壁中のアスコルビン酸によるオゾンの解毒量を計算した。計算に必要な各種パラメータには文献中の値を用いたが、細胞膜以降の抵抗値(ρ3)の情報は乏しいので、ρ3=0とρ3 ≠0の二つの場合を仮定して計算を行い、結果を比較した。従来、細胞膜界面のオゾン濃度がゼロと仮定されることが多いが、これはρ3=0と同一であり、その場合に細胞壁中のアスコルビン酸イオン(ASC-)は、オゾンの35.2%を解毒でき、残りの64.8%が細胞膜から細胞質基質に到達して、障害を引き起こす。一方、ρ3 ≠0とすれば、解毒率はより高くなり、例えば外気オゾ...

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Published in大気環境学会誌 Vol. 54; no. 3; pp. 128 - 138
Main Authors 野内, 勇, 青木, 一幸, 小林, 和彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 大気環境学会 10.05.2019
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ISSN1341-4178
2185-4335
DOI10.11298/taiki.54.128

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Summary:前報で解説した数式モデルをMicrosoft Excelを用いて記述し、細胞壁中のアスコルビン酸によるオゾンの解毒量を計算した。計算に必要な各種パラメータには文献中の値を用いたが、細胞膜以降の抵抗値(ρ3)の情報は乏しいので、ρ3=0とρ3 ≠0の二つの場合を仮定して計算を行い、結果を比較した。従来、細胞膜界面のオゾン濃度がゼロと仮定されることが多いが、これはρ3=0と同一であり、その場合に細胞壁中のアスコルビン酸イオン(ASC-)は、オゾンの35.2%を解毒でき、残りの64.8%が細胞膜から細胞質基質に到達して、障害を引き起こす。一方、ρ3 ≠0とすれば、解毒率はより高くなり、例えば外気オゾン濃度が100 ppb、ρ3=80.18 s m-1では、解毒率は64.5%となった。解毒率は、外気オゾン濃度の低下とともに高まるが、これは植物に障害を生じるオゾン濃度には閾値があるという概念と整合性がある。
ISSN:1341-4178
2185-4335
DOI:10.11298/taiki.54.128