尿路感染症分離菌に対する経口並びに注射用抗菌薬の抗菌力比較 (第13報1991年) その2.患者背景

1991年6月から翌年5月までの間に全国11施設において尿路感染症と診断された患者から分離された菌株を供試し, それらの患者背景について性別・年齢別と感染症, 年齢別・感染症別菌分離頻度, 感染症と菌種, 抗菌薬投与時期別の菌と感染症, 因子・手術の有無別の菌と感染症などにつき検討した。 年齢と性及び感染症の関連についてみると, 50歳以上では男性, 女性とも症例が多く男性では半数以上が複雑性尿路感染症であった。女性では単純性尿路感染症の症例が多かった。50歳以下では女性の症例が圧倒的に多く, その大部分が単純性尿路感染症で占められていた。単純性尿路感染症ではEscherichia coliの...

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Published inThe Japanese Journal of Antibiotics Vol. 48; no. 10; pp. 1422 - 1435
Main Authors 茂田, 士郎, 白岩, 康夫, 北川, 龍一, 藤目, 真, 守山, 洋美, 小酒井, 望, 藤田, 和彦, 小林, 芳夫, 熊本, 悦明, 田崎, 寛, 米津, 精文, 猪狩, 淳, 田仲, 紀明, 引地, 功侃, 柴田, 喜久太郎, 入, 久巳, 松宮, 清美, 菅原, 和行, 吉田, 浩, 小栗, 豊子, 松田, 静治, 古澤, 太郎, 広瀬, 崇興, 亀岡, 浩, 山口, 恵三, 高羽, 津, 田中, 美智男, 内田, 博, 竹内, 泰子, 尾形, 正裕, 餅田, 親子, 賀来, 満夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本感染症医薬品協会 25.10.1995
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ISSN0368-2781
2186-5477
DOI10.11553/antibiotics1968b.48.1422

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Summary:1991年6月から翌年5月までの間に全国11施設において尿路感染症と診断された患者から分離された菌株を供試し, それらの患者背景について性別・年齢別と感染症, 年齢別・感染症別菌分離頻度, 感染症と菌種, 抗菌薬投与時期別の菌と感染症, 因子・手術の有無別の菌と感染症などにつき検討した。 年齢と性及び感染症の関連についてみると, 50歳以上では男性, 女性とも症例が多く男性では半数以上が複雑性尿路感染症であった。女性では単純性尿路感染症の症例が多かった。50歳以下では女性の症例が圧倒的に多く, その大部分が単純性尿路感染症で占められていた。単純性尿路感染症ではEscherichia coliの分離頻度が高く, カテーテル非留置複雑性尿路感染症ではE. coli及びEnterococcus faecalisの分離頻度が高い。カテーテル留置複雑性尿路感染症ではE. faecalis及びPseudomonas aernginosaの分離頻度が高くなる。年齢と分離菌分布の関連を感染症別にみると, 単純性尿路感染症においては全ての年代においてE.coliが33.3~61.2%と最も分離頻度が高く, その他では, P.aeruginosaが1.7~20.0%, E. faecalisが3.3~9.9%, CNSが2.5~13.3%と頻度が高かった。カテーテル非留置複雑性尿路感染症では0~19歳を除いてみるとE. faecalisとP. aeruginosaが約10~20%, E. coliは17.4~26.6%と頻度が高かった。カテーテル留置複雑性尿路感染症ではE.coliの分離頻度が0.0~14.9%と他の感染症の場合より少なく, 代わってE. faecalisやP.aeruginosaは約15~30%と頻度が高くなっている。薬剤投与前後における感染症群別の菌分離頻度についてみると, 単純性尿路感染症では分離菌株数は投与前319株, 投与後34株であった。投与前に最も多く分離されたのはE.coliで56.4%を占めた。投与後の分離菌株数は薬剤感受性が低いP.aernginosaや E.faecalisなどであった。カテーテル非留置複雑性尿路感染症では分離菌株数は投与前122株, 投与後49株であった。投与前ではE. coliは26.2%, E. faecalisが20.5%, P. aeruginosaが9.0%, 投与後ではE.faecalis が20.4%と多く分離され, ついでP. aeruginosaが18.4%であった。カテーテル留置複雑性尿路感染症では投与前67株, 投与後41株と分離菌株数はあまり変わらなかった。投与前ではE.faecalisが17.9%と最も多く, ついでE. Ecoliが16.4%, P.aeruginosaが13.4%であり, 投与後ではP.aeruginosa及びE. faecalisが29.3%と高い割合を占め, E. coliは全く分離されなかった。分離菌を因子・手術の有無別, 感染症群別にみると単純性尿路感染症においては因子・手術の有無が分離される菌に大きく影響を与えていると考えられ, 因子・手術無ではE. coliが58.1%, E.faecalisが4.8%であるのに対し, 因子・手術有ではEcoliは34.9%と少なくなり, 逆にE.faecalisが12.0%と分離頻度が高くなる。しかしながら複雑性尿路感染症では因子・手術の有無は分離される菌にあまり大きな影響は認められなかった。
ISSN:0368-2781
2186-5477
DOI:10.11553/antibiotics1968b.48.1422