MRSAに対する塩酸バンコマイシン吸入療法の有効性とその限界
1991年1月~4月の期間に, MRSAに対するvancomycin hydrochloride (VCM) 吸入療法の有効性について検討した。投与症例は喀痰中からMRSAが検出された16例で, 基礎疾患は脳血管疾患 (12例), 慢性呼吸器疾患 (2例) などであった。MRSAは全例いわゆる定着群 (Colonized type) と考えられ, 治療前8例に緑膿菌あるいはブドウ糖非発酵菌が混合感染していた。治療後2週間以内のMRSA消失率は初回治療で14例 (88%), 再発症例も含めると24例中21例 (88%) で, 消失までの期間は2~14日 (平均5. 0日) であった。また病棟内の...
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Published in | CHEMOTHERAPY Vol. 40; no. 4; pp. 481 - 490 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本化学療法学会
1992
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Subjects | |
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ISSN | 0009-3165 1884-5894 |
DOI | 10.11250/chemotherapy1953.40.481 |
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Summary: | 1991年1月~4月の期間に, MRSAに対するvancomycin hydrochloride (VCM) 吸入療法の有効性について検討した。投与症例は喀痰中からMRSAが検出された16例で, 基礎疾患は脳血管疾患 (12例), 慢性呼吸器疾患 (2例) などであった。MRSAは全例いわゆる定着群 (Colonized type) と考えられ, 治療前8例に緑膿菌あるいはブドウ糖非発酵菌が混合感染していた。治療後2週間以内のMRSA消失率は初回治療で14例 (88%), 再発症例も含めると24例中21例 (88%) で, 消失までの期間は2~14日 (平均5. 0日) であった。また病棟内の落下細菌検査では, VCM吸入療法後にMRSAはまったく検出されなくなった。一方, 83%の症例で吸入中止後4~28日 (平均13. 3日) 後にMRSAが再発した。VCM吸入前と再発後で, MRSAの諸性状が異なった症例が多く, 再発は再感染であることが示唆された。またVCM吸入後の混合感染菌については, 4例であらたに緑膿菌あるいはブドウ糖非発酵菌が検出され, 同菌への菌交代と考えられた。VCM吸入療法はMRSAの一時的除去に有用であり, 特に, 短期間の間欠的反復投与が院内感染としてのMRSAの有効な対策であると思われる。しかし完全に除去するためには宿主側の要因が大きく, その全身状態を改善する必要があると考えられた。 |
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ISSN: | 0009-3165 1884-5894 |
DOI: | 10.11250/chemotherapy1953.40.481 |