飼育下の雌雄シャモア(Rupicapra rupicapra)における糞中の ステロイドホルモン動態からみた繁殖の季節性と妊娠

飼育下シャモア(Rupicapra rupicapra)において,糞中のステロイドホルモン動態から,雌雄の繁殖季節や雌の発情周期などの繁殖生理を明らかにすることを目的とした。雄2頭と雌1頭から糞を採取し,雄ではテストステロン(T)およびアンドロステンジオン(AD)を,雌ではプロジェステロン(P4),エストラジオール-17β(E2),エストロン(E1)およびコルチゾールを酵素免疫測定法により定量した。雄における糞中TおよびAD動態は類似した周年変動を示した。TおよびAD含量は,4月または5月頃に増加し始め,雌のP4動態に周期性(発情周期)がみられ始めた11月または12月頃には減少する傾向がみられ...

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Published in日本野生動物医学会誌 Vol. 28; no. 1; pp. 25 - 34
Main Authors 楠田, 哲士, 織田, 拓, 下川, 優紀, 吉田, 智紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本野生動物医学会 05.04.2023
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ISSN1342-6133
2185-744X
DOI10.5686/jjzwm.28.25

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Summary:飼育下シャモア(Rupicapra rupicapra)において,糞中のステロイドホルモン動態から,雌雄の繁殖季節や雌の発情周期などの繁殖生理を明らかにすることを目的とした。雄2頭と雌1頭から糞を採取し,雄ではテストステロン(T)およびアンドロステンジオン(AD)を,雌ではプロジェステロン(P4),エストラジオール-17β(E2),エストロン(E1)およびコルチゾールを酵素免疫測定法により定量した。雄における糞中TおよびAD動態は類似した周年変動を示した。TおよびAD含量は,4月または5月頃に増加し始め,雌のP4動態に周期性(発情周期)がみられ始めた11月または12月頃には減少する傾向がみられた。周期中のP4低値時期には雄から雌への追尾,マウント,交尾が認められた。P4動態に基づく発情周期は平均23.0日間であった。雌は研究開始時に妊娠しており(分娩79日前),研究期間中に妊娠期間184日で出産したが,死産であった。妊娠中の糞中P4含量は高値を維持し,分娩前日に急減した。その後,分娩195日目に発情周期の回帰がみられた。妊娠中の糞中E2およびE1は,ほぼ同様の高い変動を示した。妊娠中の糞中コルチゾール含量は分娩約40日前から顕著に増加し,分娩前日まで高値で推移した後,分娩翌日に急減した。本研究により,糞中のステロイドホルモン動態からシャモアの繁殖季節と発情周期が把握でき,短日性の多発情動物であることが明らかになった。また,雌における糞中P4,E2およびE1の測定は妊娠判定や妊娠のモニタリングに有用であった。
ISSN:1342-6133
2185-744X
DOI:10.5686/jjzwm.28.25