生物多様性条約におけるアクセスと利益配分の国際ルール
<生物多様性条約> 生物多様性条約(The Convention on Biological Diversity: CBD)は 1993 年 12 月 29 日に発効し、日本はすでに 1993 年 5 月 28 日にこれを批准している。現在、日本を含め 188 カ国が加盟している。CBD は、以下に示す 3 つの柱から構成されている。 (1)生物多様性の保全 (2)その構成要素(生物資源)の持続可能な利用 (3)その利用から生ずる利益の公正かつ衡平な分配 一般に、CBD は地球上の生物の多様性を保全しようという趣旨の点から環境条約として理解されている。しかし、“生物資源の持続可能な利...
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Published in | 日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 p. 2 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医真菌学会
2005
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Subjects | |
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ISSN | 0916-4804 |
DOI | 10.11534/jsmm.49.0.2.0 |
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Summary: | <生物多様性条約> 生物多様性条約(The Convention on Biological Diversity: CBD)は 1993 年 12 月 29 日に発効し、日本はすでに 1993 年 5 月 28 日にこれを批准している。現在、日本を含め 188 カ国が加盟している。CBD は、以下に示す 3 つの柱から構成されている。 (1)生物多様性の保全 (2)その構成要素(生物資源)の持続可能な利用 (3)その利用から生ずる利益の公正かつ衡平な分配 一般に、CBD は地球上の生物の多様性を保全しようという趣旨の点から環境条約として理解されている。しかし、“生物資源の持続可能な利用”および“その利用から生ずる利益の公平な配分”の内容は、まさに経済条約の側面を有していることに注目すべきである。 <遺伝資源の取得の機会> CBD の第 15 条に「遺伝資源の取得の機会」の条項があり、ここでは、他国の遺伝資源を利用したい場合の条項が述べられている。その第 1 項には、1.各国は、自国の天然資源に対して主権的権利を有するものと認められ、遺伝資源の取得の機会につき定める権限は、当該遺伝資源が存する国の政府に属し、その国の国内法令に従う。第 5 項には、5.遺伝資源の取得の機会が与えられるためには、当該遺伝資源の提供国である締約国が別段の決定を行う場合を除くほか、事前の情報に基づく当該締約国の同意を必要とする。また、第7項では、7.締約国は、遺伝資源の研究及び開発の成果並びに商業的利用その他の利用から生ずる利益を当該遺伝資源の提供国である締約国と公正かつ衡平に配分するため・・・・・適宜、立法上、行政上又は政策上の措置をとる。その配分は、相互に合意する条件で行う。と述べられている。以上のように、海外の遺伝資源については、その国に管轄権があることから、勝手に日本に持ってくることは、バイオパイラシー、すなわち生物資源の海賊行為、とみなされ、国際的な非難の対象となるのである。くれぐれも、バイオパイラシーの汚名をそそがれることのないように、CBD を十分認識したうえでの海外生物資源への慎重なアクセスが望まれる。 <おわりに> (独)製品評価技術基盤機構(NITE)、バイオテクノロジー本部(DOB)では、CBD に則った方式で海外微生物探索を行っている。2003 年にインドネシアとの共同研究を開始し、2004年からはミャンマーならびにベトナムとも共同研究を開始した。また、2004 年にはインドネシアから移動したインドネシア産の微生物を企業へも提供し、その有用性の解析を行っている。2005 年には、同様にインドネシア産だけでなくミャンマー産およびベトナム産の微生物を希望する企業へ提供する予定になっている。さらに、2005 年の 11 月には、企業の研究者と合同でベトナムの微生物調査を行いたいと予定している。このような情報は、NITE のホームページ (http://www.nite.go.jp) で公開しているので、興味のある方は見ていただきたい。 |
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Bibliography: | ED |
ISSN: | 0916-4804 |
DOI: | 10.11534/jsmm.49.0.2.0 |