日本産業保健法学会連携プログラム「境界性パーソナリティ障害を理由とした免職と職場の対応」

神戸市職員X氏は,情緒不安定性パーソナリティ障害および双極性気分障害の診断を受け,職場で自傷行為や同僚への脅迫行為などの問題行動を繰り返した結果,分限免職処分を受けた.この処分を巡り,地裁と高裁で判断が分かれた.地裁は,治療可能性や配置転換による改善の余地を重視し,処分を取り消した.一方,高裁は疾患の持続性と再発リスクを優先し,職場安全の観点から処分を有効とした.この判決について,精神科医からは,適切な治療と環境調整により社会的適応が可能であるが,職場ストレスが症状悪化を招いた可能性も指摘された.本事例は,精神疾患を抱える職員への対応における職場安全と個人の権利のバランスの重要性を示しており,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in産業精神保健 Vol. 33; no. 1; pp. 46 - 48
Main Author 田中, 克俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本産業精神保健学会 20.02.2025
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1340-2862
2758-1101
DOI10.57339/jjomh.33.1_46

Cover

Loading…
More Information
Summary:神戸市職員X氏は,情緒不安定性パーソナリティ障害および双極性気分障害の診断を受け,職場で自傷行為や同僚への脅迫行為などの問題行動を繰り返した結果,分限免職処分を受けた.この処分を巡り,地裁と高裁で判断が分かれた.地裁は,治療可能性や配置転換による改善の余地を重視し,処分を取り消した.一方,高裁は疾患の持続性と再発リスクを優先し,職場安全の観点から処分を有効とした.この判決について,精神科医からは,適切な治療と環境調整により社会的適応が可能であるが,職場ストレスが症状悪化を招いた可能性も指摘された.本事例は,精神疾患を抱える職員への対応における職場安全と個人の権利のバランスの重要性を示しており,治療可能性の評価や柔軟な職場環境の調整が重要であることを示唆している.
ISSN:1340-2862
2758-1101
DOI:10.57339/jjomh.33.1_46