オープンダイアローグの衝撃

フィンランドで開発された「オープンダイアローグ」は,近年急速に注目を集めつつある統合失調症急性期へのアプローチである.1980年代から実践されており,ほとんど入院治療や薬物治療を行わずに,きわめて良好な治療成績を上げている.発症直後,患者や家族からの依頼を受けて24時間以内に,「専門家チーム」が結成され,患者の自宅を訪問する.本人や家族,そのほか関係者が車座になって座り「開かれた対話」を行う.こうした対話実践で回復が起きてしまう事実は筆者に限らず,精神医療関係者に大きな衝撃をもたらした.本稿では,オープンダイアローグの七原則,とりわけ「不確実性の耐性」を維持しつつ,ゴールよりもプロセスを尊重す...

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Published in産業精神保健 Vol. 33; no. 2; pp. 91 - 95
Main Author 斎藤, 環
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本産業精神保健学会 20.06.2025
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ISSN1340-2862
2758-1101
DOI10.57339/jjomh.33.2_91

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Summary:フィンランドで開発された「オープンダイアローグ」は,近年急速に注目を集めつつある統合失調症急性期へのアプローチである.1980年代から実践されており,ほとんど入院治療や薬物治療を行わずに,きわめて良好な治療成績を上げている.発症直後,患者や家族からの依頼を受けて24時間以内に,「専門家チーム」が結成され,患者の自宅を訪問する.本人や家族,そのほか関係者が車座になって座り「開かれた対話」を行う.こうした対話実践で回復が起きてしまう事実は筆者に限らず,精神医療関係者に大きな衝撃をもたらした.本稿では,オープンダイアローグの七原則,とりわけ「不確実性の耐性」を維持しつつ,ゴールよりもプロセスを尊重すること,対話実践におけるリフレクティングの位置付け,患者の主観世界を尊重する「無知の姿勢」やポリフォニーの持つ意義などについて述べる.最後に日本における実装状況と今後の展望について簡単に紹介する.
ISSN:1340-2862
2758-1101
DOI:10.57339/jjomh.33.2_91