新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにおける入院前スクリーニング検査に関する後方視点的研究

新型コロナウイルス感染症の患者は,発症前及び無症状でも他者への感染性があり,パンデミック中,多くの病院で無症状者に対するスクリーニング検査が導入された.本研究では入院前スクリーニング検査の感染対策への影響について後方視点的検証を行った.東京科学大学病院(旧 東京医科歯科大学病院)で2020年4月1日から2023年3月13日まで予定入院患者に対し入院前スクリーニング検査を施行した.検体は鼻咽頭からスワブで採取し,SARS-CoV-2のRT-PCR検査を実施した.検査の陽性率,偽陽性率を検査結果及びカルテから症状等の有無を確認し算出した.期間中の検査実施件数は45,979件だった.陽性件数は400...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 39; no. 6; pp. 228 - 232
Main Authors 出口, 理香子, 田頭, 保彰, 逢坂, 啓莉, 具, 芳明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 25.11.2024
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Summary:新型コロナウイルス感染症の患者は,発症前及び無症状でも他者への感染性があり,パンデミック中,多くの病院で無症状者に対するスクリーニング検査が導入された.本研究では入院前スクリーニング検査の感染対策への影響について後方視点的検証を行った.東京科学大学病院(旧 東京医科歯科大学病院)で2020年4月1日から2023年3月13日まで予定入院患者に対し入院前スクリーニング検査を施行した.検体は鼻咽頭からスワブで採取し,SARS-CoV-2のRT-PCR検査を実施した.検査の陽性率,偽陽性率を検査結果及びカルテから症状等の有無を確認し算出した.期間中の検査実施件数は45,979件だった.陽性件数は400件,判定保留件数は189件であったが,新規感染症例の件数は182件,既感染症例の件数は239例であり,入院前スクリーニング検査は陰性であったが,入院後に発症し診断された持込症例の件数は46件だった.パンデミックの初期では,無症状者に対するスクリーニング検査が感染対策上有用だった可能性があるが,単位患者数当たりの検査陽性の件数は低値であった.オミクロン株以後は,流行を迎える毎に単位患者数当たりの新規感染症例数は増加したが,判定保留症例や既感染症例も増加した.入院前スクリーニング検査の病院感染対策への寄与度はあった一方で,早期に運用を見直すことができた可能性がある.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.39.228