保健医療サービスに対する仮想評価法(Contingent Valuation Method) 本邦研究のレビューと海外研究の概要

保健医療サービスの便益を測定する手段として,仮想評価法(contingent valuation method, CVM)が知られる。仮想評価法は,アンケート調査を用いて,仮想的な市場を描いたシナリオの下でのサービスに対する被験者の支払意思額(Willingness to Pay, WTP)を推定する手法である。われわれは本稿において,保健医療サービスの仮想評価法に関するこれまでの海外研究を概説し,本邦研究のレビューを行った。MEDLINE, EconLit,医学中央雑誌を用いて検索された本邦研究14編(英文 5 編,和文 9 編)について,アンケート調査の方法,仮想的シナリオに含むべき情報,...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 53; no. 11; pp. 818 - 830
Main Authors 大江, 和彦, 康永, 秀生, 井出, 博生, 今村, 知明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2006
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.53.11_818

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Summary:保健医療サービスの便益を測定する手段として,仮想評価法(contingent valuation method, CVM)が知られる。仮想評価法は,アンケート調査を用いて,仮想的な市場を描いたシナリオの下でのサービスに対する被験者の支払意思額(Willingness to Pay, WTP)を推定する手法である。われわれは本稿において,保健医療サービスの仮想評価法に関するこれまでの海外研究を概説し,本邦研究のレビューを行った。MEDLINE, EconLit,医学中央雑誌を用いて検索された本邦研究14編(英文 5 編,和文 9 編)について,アンケート調査の方法,仮想的シナリオに含むべき情報,支払意思額の質問形式,仮想評価法に特異的なバイアスの問題,妥当性・信頼性,事後評価・事前評価,利他的支払意思,非健康価値,以上の 8 項目を検証した。本邦研究では,(1)仮想的シナリオに含むべき情報が十分でない研究がある,(2)バイアスの存在や対処法を実証した研究はない,(3)妥当性は一部検証されているが,信頼性のテストは実施されていない,(4)すべて事後的利用者基盤評価である,(5)利他的支払意思や非健康価値は十分に検討されていない,ことが明らかとなった。仮想評価法は,その様々な利点を勘案すれば,他の経済評価手法を補完しうる有力な分析ツールになりうると考えられる。本邦において,仮想評価研究はまだその端緒が開かれたばかりである。多くの保健医療従事者に仮想評価法が活用され,本邦の医療経済研究がさらに活性化されることが期待される。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.53.11_818