男児(2歳11カ月)の成長過程におけるカリエスマネジメント:15年間の記録
初診時2歳11カ月の小児男性の18歳までの約15年間のカリエスマネジメントの記録を報告する.この男児の初診時のプラークコントロールは不良で,乳歯のう歯(d)・修復歯(f)の合計は8,ICDASコード3~4のう窩を複数認めた.常時手の届くところに菓子類があり,欲しいときに食べるという生活で,食事中にコーラを常飲していた.母親への刷掃指導から1カ月後,口腔衛生状態の顕著な改善をみた.母親は,再石灰化療法を希望した.おしゃぶりの弊害について説明したところ,3カ月後に,おしゃぶりを止められたと報告があり,7カ月後にはプラークコントロールレコード(PCR)が10%にまで低下し,初診時に認められた開咬も改...
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Published in | 日本ヘルスケア歯科学会誌 Vol. 24; no. 1; pp. 56 - 64 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本ヘルスケア歯科学会
31.12.2023
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Subjects | |
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ISSN | 2187-1760 2436-7311 |
DOI | 10.51066/jhcda.24.1_56 |
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Summary: | 初診時2歳11カ月の小児男性の18歳までの約15年間のカリエスマネジメントの記録を報告する.この男児の初診時のプラークコントロールは不良で,乳歯のう歯(d)・修復歯(f)の合計は8,ICDASコード3~4のう窩を複数認めた.常時手の届くところに菓子類があり,欲しいときに食べるという生活で,食事中にコーラを常飲していた.母親への刷掃指導から1カ月後,口腔衛生状態の顕著な改善をみた.母親は,再石灰化療法を希望した.おしゃぶりの弊害について説明したところ,3カ月後に,おしゃぶりを止められたと報告があり,7カ月後にはプラークコントロールレコード(PCR)が10%にまで低下し,初診時に認められた開咬も改善した.そこで,定期的にPMTCを行うメインテナンスに移行した.思春期に入ると母親との会話はなくなったが,歯科衛生士の話は聞いてくれる状態がつづいたが,右下6番の近心隣接面に象牙質に及ぶ透過像(XR3)を認めた.それをきっかけに,切削介入を控えて生活習慣の改善を軸に,4カ月に1度のPMTC通院,フッ素洗口,フロッシングの励行を勧めた.この生活習慣は持続し,中学2年の一時不登校の時期にも就寝前のフッ素洗口,フロッシングを欠かさない生活習慣が続いたが,中学3年夏の受験期には厚いプラークが付着,高校に進んでもPCR高値が続くことになった.そこで観察部位の切削介入をせざるを得ないと伝えたところ高校1年末のPCR値は低下した.幼児期のプラークコントロール不良から始まり,切削介入を控えて経過観察を提案したところ,思春期を通じてPMTCのための通院を継続した.精神的な成長過程において幾度かのカリエスリスクの起伏を経験したカリエスマネジメントの報告である. |
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ISSN: | 2187-1760 2436-7311 |
DOI: | 10.51066/jhcda.24.1_56 |