災害復興のパラダイムシフト

本論文の目的は、災害復興について考えるときに私たちが依拠する基軸パラダイムについて再考することである。具体的には、現時点で、標準的と考えられている2つのパラダイムについて、そこからのパラダイムシフトの可能性について考察した。第1は、「世直しvs.立て直し」から「やり直し」へのパラダイムシフト、第2は、Build Back Better(BBB;拡張・発展的復興)からSave Sound Shrink(SSS;縮小・楽着的復興)へのパラダイムシフト、である。前者では、被災前のなんでもない日常、おだやかな暮らしを被災者が回顧・想起するための作業、つまり、疑似的な「やり直し」の重要性を指摘した。後者...

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Published in日本災害復興学会論文集 Vol. 15; pp. 37 - 43
Main Author 矢守, 克也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本災害復興学会 2020
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Summary:本論文の目的は、災害復興について考えるときに私たちが依拠する基軸パラダイムについて再考することである。具体的には、現時点で、標準的と考えられている2つのパラダイムについて、そこからのパラダイムシフトの可能性について考察した。第1は、「世直しvs.立て直し」から「やり直し」へのパラダイムシフト、第2は、Build Back Better(BBB;拡張・発展的復興)からSave Sound Shrink(SSS;縮小・楽着的復興)へのパラダイムシフト、である。前者では、被災前のなんでもない日常、おだやかな暮らしを被災者が回顧・想起するための作業、つまり、疑似的な「やり直し」の重要性を指摘した。後者では、個人、集落、社会などが小さくなること、また消えていくことを、無条件に望ましくなく回避すべきこととしてとらえるのではなく、そこに幸福や満足を見いだし、それを、「死」ではなく「生」のプロセスとして(も)見るべきとの提起を行なった。
ISSN:2435-4147
DOI:10.34606/jsdrr.15.0_37