気管支鏡検査に伴い肺高血圧症の増悪を来した先天性心疾患を有する18トリソミーの1例

胎児診断の精度の向上や新生児治療の発展に伴い,これまで救命や手術が困難だった先天性心疾患の生存例が増加している.また,染色体異常等の基礎疾患により先天性心疾患を合併する児の治療方針に関しては姑息的治療から根治的治療まで多様で,内科的な介入や姑息治療のみで肺循環と体循環を維持して生活している症例も増加しているが,なんらかのイベントによりそれが破綻すると突然状態が悪化し集中治療を要することがある.今回,気管支境検査施行中に肺高血圧症が増悪し集中治療を要した染色体異常を伴う未修復先天性心疾患症例を経験した.今後も類似する病態の症例は増加すると考えられ報告する.18トリソミーと両大血管右室起始症があり...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in昭和医科大学雑誌 Vol. 85; no. 3; pp. 238 - 243
Main Authors 小林, 梢, 出納, 達也, 水野, 克己, 柿, 佑樹, 石井, 瑶子, 喜瀬, 広亮, 日隈, のどか
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和医科大学学士会 2025
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN2759-8144
2759-8152
DOI10.14930/jsmu.85.3_238

Cover

More Information
Summary:胎児診断の精度の向上や新生児治療の発展に伴い,これまで救命や手術が困難だった先天性心疾患の生存例が増加している.また,染色体異常等の基礎疾患により先天性心疾患を合併する児の治療方針に関しては姑息的治療から根治的治療まで多様で,内科的な介入や姑息治療のみで肺循環と体循環を維持して生活している症例も増加しているが,なんらかのイベントによりそれが破綻すると突然状態が悪化し集中治療を要することがある.今回,気管支境検査施行中に肺高血圧症が増悪し集中治療を要した染色体異常を伴う未修復先天性心疾患症例を経験した.今後も類似する病態の症例は増加すると考えられ報告する.18トリソミーと両大血管右室起始症があり気管切開・在宅人工呼吸器が導入されている2歳の男児.生後約半年間新生児集中治療室(NICU:Neonatal Intensive Care Unit)に入院歴がある.退院後は内服のみで呼吸循環動態は安定し,経時的に肺高血圧は増悪していたが入退院を繰り返すことはなく自宅で生活し外来管理されていた.頻回な吸引による血痰を主訴に来院した.来院時バイタルサインは安定しており出血源精査のため気管支鏡検査を行った.気管カニューレの先端を観察中に顔色不良となり,血圧低下,経皮的酸素飽和度(SpO2)が低下したため用手換気を開始した.その後も呼吸循環動態が安定せず集中治療室(ICU:Intensive Care Unit)に入室した.ウイルス感染症と気管支鏡の処置に伴う肺高血圧の急性増悪と診断し,鎮静・人工呼吸器管理・輸液管理・一酸化窒素吸入療法を行った.その後は経時的に肺高血圧は改善し,第16病日に一般病棟へ転棟し,第31病日に自宅退院した.染色体異常を合併した未修復先天性心疾患症例や姑息術後症例では,侵襲的処置で容易に肺高血圧の増悪や血行動態の破綻を来す可能性があり肺高血圧治療を含めた集中治療管理を念頭におき対応する必要がある.
ISSN:2759-8144
2759-8152
DOI:10.14930/jsmu.85.3_238