糖尿病性腎症診療の課題とその成因に基づく解析

糖尿病性腎症は糖尿病合併症において最も重要であり,腎症は末期腎不全に陥る最も多い疾患であるばかりでなく,心血管疾患の主たる要因でもある。その対策は医療上,社会上,経済的側面からも21 世紀医療における最重要課題である。その病態で重要なのはメサンギウム基質増生と糸球体基底膜肥厚である。そのうちメサンギウム基質増生は腎機能低下と相関を認め,病態に特異的な病変であると考えられる。糖尿病性腎症の診療で早期腎症の診断とその対策は腎症治療の基本である。現在,早期腎症の診断は微量アルブミン尿でなされているが,その意義と病理学的所見とは必ずしも一致しない。したがって,腎症診断の問題点は現在の糖尿病診療における...

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Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 26; no. 2; pp. 220 - 226
Main Author 土井, 俊夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児腎臓病学会 2014
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Summary:糖尿病性腎症は糖尿病合併症において最も重要であり,腎症は末期腎不全に陥る最も多い疾患であるばかりでなく,心血管疾患の主たる要因でもある。その対策は医療上,社会上,経済的側面からも21 世紀医療における最重要課題である。その病態で重要なのはメサンギウム基質増生と糸球体基底膜肥厚である。そのうちメサンギウム基質増生は腎機能低下と相関を認め,病態に特異的な病変であると考えられる。糖尿病性腎症の診療で早期腎症の診断とその対策は腎症治療の基本である。現在,早期腎症の診断は微量アルブミン尿でなされているが,その意義と病理学的所見とは必ずしも一致しない。したがって,腎症診断の問題点は現在の糖尿病診療における重要な課題である。治療も血糖コントロール,RAS 系阻害薬による治療,蛋白制限などが行われているが,未だ腎不全対策ということより十分に対策ができていない。さらに,糖尿病性腎症における網膜症のとらえ方についても言及し,診断・治療の課題について述べる。我々は糖尿病性腎症の機序にメサンギウム細胞増殖,糸球体肥大症,メサンギウム細胞の形質変化,細胞外基質産生制御などが関与することを一連の研究で明らかにしてきたが,それら遺伝子制御の機構を解析し,その責任分子としてSmad1 を認めた。さらにSmad1 が糖尿病性腎症を惹起させる新たな転写因子であることをin vitro およびin vivo で証明した。最近のこれら一連の研究の進展について記す。最後にヒト糖尿病性腎症におけるこれら関連分子の意義とその応用の可能性について解説する。
ISSN:0915-2245
1881-3933
DOI:10.3165/jjpn.26.220