コムギ品種「きぬあかり」の生育状況に応じた追肥窒素量診断法の開発

「きぬあかり」は愛知県が育成した収量性の高い日本麺用コムギ品種である.2016年以降,県内コムギ作付面積の約8割にあたる4500 ha前後で栽培され,2018年から2020年には10 aあたり収穫量が3年連続で全国1位になるなど,当県コムギ収量の向上に貢献してきた.本研究は,愛知県内コムギ実需者の要望等により設定した目標「子実タンパク質含有率9.0~9.5%」並びに「実収量10 aあたり480 kg」達成を目指し,生育期間中のコムギの生育状況から生産現場で簡易に追肥窒素量を診断できる手法を開発することを目的に実施した.まず,2カ年にわたり農業総合試験場内ほ場で播種時期と窒素施肥量の組み合わせ試...

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Published in日本作物学会紀事 Vol. 94; no. 3; pp. 294 - 300
Main Authors 伴 佳典, 吉田 朋史, 船生 岳人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本作物学会 05.07.2025
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ISSN0011-1848
1349-0990
DOI10.1626/jcs.94.294

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Summary:「きぬあかり」は愛知県が育成した収量性の高い日本麺用コムギ品種である.2016年以降,県内コムギ作付面積の約8割にあたる4500 ha前後で栽培され,2018年から2020年には10 aあたり収穫量が3年連続で全国1位になるなど,当県コムギ収量の向上に貢献してきた.本研究は,愛知県内コムギ実需者の要望等により設定した目標「子実タンパク質含有率9.0~9.5%」並びに「実収量10 aあたり480 kg」達成を目指し,生育期間中のコムギの生育状況から生産現場で簡易に追肥窒素量を診断できる手法を開発することを目的に実施した.まず,2カ年にわたり農業総合試験場内ほ場で播種時期と窒素施肥量の組み合わせ試験により作出した生育状況の異なる合計288の調査値を解析した.その結果,目標達成の目安となる成熟期の植物体地上部窒素吸収量は12~17 g m—2であること,茎立期の生育指標値(草丈・茎数・葉緑素計値の積)は同時期の植物体地上部窒素吸収量並びに成熟期の子実タンパク質含有率及び単位面積あたり収量などと高い正の相関があることを明らかにし,茎立期の生育指標値に応じて追肥窒素量を増減する手法を設計した.さらにその後2カ年にわたり,県内のコムギ生産者が栽培する栽培管理や生育の異なる49の現地ほ場において,設計した追肥窒素量診断法の検証を試みた.その結果,茎立期の生育指標値から診断した追肥窒素量を施用することで,慣行と比較して子実タンパク質含有率及び単位面積あたり収量が高まり,目標に近づける効果を明らかにした.
ISSN:0011-1848
1349-0990
DOI:10.1626/jcs.94.294