不安・抑うつ発作Anxious-Depressive Attack(ADA)と複雑性心的外傷後ストレス障害Complex Post-Traumatic Stress Disorder(CPTSD)―類似点と相違点

ADAは,明白な心理的原因で突然激しい陰性情動が生じ,それに引き続き主に過去の無念な思いが侵入反芻する発作である。ADAでも,CPTSDの症状である再体験症状,認知面の変化(無力感など),パーソナリティの変化(孤立など),感情制御上の困難(自傷行為など)が程度の差はあるが認められる。ただ,後三者の状態はADAの根底にある社交不安と拒絶過敏性により説明される。また,以下の点でADAはCPTSDから区別される:発症から終末まで一定の経過を取る;過去の不幸な出来事は心的外傷というほど激しくなく,その記憶のテーマは多岐にわたる;パニック症ではパニック発作と不安・抑うつ発作が交互に出現する;不安・抑うつ...

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Published in不安症研究 Vol. 11; no. 1; pp. 52 - 58
Main Author 貝谷, 久宣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本不安症学会 30.11.2019
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ISSN2188-7578
2188-7586
DOI10.14389/jsad.11.1_52

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Summary:ADAは,明白な心理的原因で突然激しい陰性情動が生じ,それに引き続き主に過去の無念な思いが侵入反芻する発作である。ADAでも,CPTSDの症状である再体験症状,認知面の変化(無力感など),パーソナリティの変化(孤立など),感情制御上の困難(自傷行為など)が程度の差はあるが認められる。ただ,後三者の状態はADAの根底にある社交不安と拒絶過敏性により説明される。また,以下の点でADAはCPTSDから区別される:発症から終末まで一定の経過を取る;過去の不幸な出来事は心的外傷というほど激しくなく,その記憶のテーマは多岐にわたる;パニック症ではパニック発作と不安・抑うつ発作が交互に出現する;不安・抑うつ発作の不安・焦燥は侵入思考の内容への反応以上の激しさ(不安発作)が認められる。以上より,ADAはCPTSDに近似ではあるが区別されうる病態と考えられる。
ISSN:2188-7578
2188-7586
DOI:10.14389/jsad.11.1_52