新型コロナウイルス陽性母体から出生した新生児49例の臨床像─第8波までの検討

新型コロナウイルス (severe acute respiratory syndrome coronavirus 2; SARS-CoV-2) の蔓延に伴い,SARS-CoV-2に感染した母体も増加し,それに伴いSARS-CoV-2感染母体から出生した新生児も増加した.本研究では,日本大学医学部附属板橋病院において,SARS-CoV-2感染母体から出生した新生児の臨床経過の特徴を明らかにすることを目的とした. 2020年3月1日~2023年4月30日の期間に,分娩時にSARS-CoV-2陽性であった母体と,その母体から出生した児を対象とした.診療録をもとに,母体背景と児の臨床因子を後方視的に検...

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Published in日大医学雑誌 Vol. 84; no. 3; pp. 95 - 100
Main Authors 小松, 篤史, 渡邉, 勇太, 青木, 藍子, 長野, 伸彦, 川名, 敬, 松田, 恵里那, 土方, みどり, 岡橋, 彩, 不破, 一将, 森岡, 一朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大学医学会 01.06.2025
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ISSN0029-0424
1884-0779
DOI10.4264/numa.84.3_95

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Summary:新型コロナウイルス (severe acute respiratory syndrome coronavirus 2; SARS-CoV-2) の蔓延に伴い,SARS-CoV-2に感染した母体も増加し,それに伴いSARS-CoV-2感染母体から出生した新生児も増加した.本研究では,日本大学医学部附属板橋病院において,SARS-CoV-2感染母体から出生した新生児の臨床経過の特徴を明らかにすることを目的とした. 2020年3月1日~2023年4月30日の期間に,分娩時にSARS-CoV-2陽性であった母体と,その母体から出生した児を対象とした.診療録をもとに,母体背景と児の臨床因子を後方視的に検討した.院内感染予防の観点から,SARS-CoV-2感染母体の分娩方法は全例帝王切開とし,出生児1名に対し原則として小児科医2名(蘇生/搬送担当)と助産師1名で対応した.出生後,児は保育器に収容し,NICUまたはGCUで他児と2 m以上の間隔を空けて管理した.2回の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応 (Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction; RT-PCR) 陰性確認(2回目は生後48時間以降)後に隔離を解除した.栄養は人工乳で開始し,授乳指導は原則退院時のみ行った.早産児例では母の隔離解除後から母乳を使用した.調査期間中,分娩時にSARS-CoV-2陽性であった母体は48人,出生児は双胎を含む49人であった.母体の年齢の中央値は33歳で,初産は24人(50%)であった.感染経路としては家族内感染が32人(67%)と最も多く,重症度は中等症以上が6人(12%)であった.出生児は男児が27人(55%),在胎週数・出生体重の中央値はそれぞれ38週・3,021 gであり,早産児は8人(16%)であった.出生後24時間以内のSARS-CoV-2 RT-PCR・抗原検査および出生後48時間以降のRT-PCR検査はいずれも全例陰性で,垂直感染は認められなかった.合併症は,呼吸窮迫症候群が4人(8%),新生児一過性多呼吸が12人(24%)であった.退院日齢の中央値は8日であった.本研究では,母体の重症度にかかわらず,全例で出生後の児のSARS-CoV-2検査は陰性であり,垂直感染はみられなかった.
ISSN:0029-0424
1884-0779
DOI:10.4264/numa.84.3_95