介護老人保健施設の職員に対するWHO手指衛生多角的戦略実施の効果

本研究は, WHO手指衛生多角的戦略に基づく教育プログラムが, 手指衛生の遵守および感染症罹患率に及ぼす有効性を評価することを目的とし, 介護老人保健施設の職員を対象に教育プログラムを実施した介入研究である. 対象群を設けない単一群試験において, 介入前, 介入後1ヶ月, 介入後8ヶ月の3時点で手指衛生の遵守状況を観察し, 入居者の感染症罹患率は, 介入前と, 季節による条件を揃えるため介入前調査の翌年同時期の2時点で算出した. その結果, 参加者の手指衛生遵守率は, 介入前は19.7% (75/380場面), 介入1ヶ月後は57.0% (213/374場面), 介入8ヶ月後は55.1% (2...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 39; no. 1; pp. 1 - 10
Main Authors 高橋, 幸子, 落合, 亮太, 渡部, 節子
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 25.01.2024
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Summary:本研究は, WHO手指衛生多角的戦略に基づく教育プログラムが, 手指衛生の遵守および感染症罹患率に及ぼす有効性を評価することを目的とし, 介護老人保健施設の職員を対象に教育プログラムを実施した介入研究である. 対象群を設けない単一群試験において, 介入前, 介入後1ヶ月, 介入後8ヶ月の3時点で手指衛生の遵守状況を観察し, 入居者の感染症罹患率は, 介入前と, 季節による条件を揃えるため介入前調査の翌年同時期の2時点で算出した. その結果, 参加者の手指衛生遵守率は, 介入前は19.7% (75/380場面), 介入1ヶ月後は57.0% (213/374場面), 介入8ヶ月後は55.1% (210/381場面) だった (p<0.001). 感染症罹患率は, 「新規発生した患者数÷期間内の施設入所者数の総和×1,000」として算出し, 介入前が1.84, 介入後が0.81であった. 所見から, 介護老人保健施設の職員に対する看護師主導のWHO手指衛生多角的戦略に基づく教育プログラムの実施は, 手指衛生の遵守を改善し, 感染症罹患率を低下させることが示唆された.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.39.1