釣獲法によって得られた利根川河口堰下流域におけるマハゼAcanthogobius flavimanusの齢構成と成長

マハゼAcanthogobius flavimanusは日本の内湾や河口域に生息し,遊漁や漁獲対象として内湾域での水産業に寄与していたが,漁獲量が激減するとともに,高価な魚となっている.本種については産卵生態,初期発生や仔・稚魚の形態については詳細な報告があるものの,生息密度の年変動を比較した報告はほとんどない.本研究では努力量を一定とした釣獲法による定点観測を10年間継続することにより,生息密度の長期的な変動を調査した.2009年から2019年に行った122回(努力量は244時間)の調査で,847個体のマハゼを釣獲した.マハゼのCPUE(単位努力量あたりの捕獲数)は0~31(個体/人/2時間...

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Published in伊豆沼・内沼研究報告 Vol. 19; pp. 65 - 76
Main Authors 萩原, 富司, 諸澤, 崇裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団 2025
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ISSN1881-9559
2424-2101
DOI10.20745/izu.19.0_65

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Summary:マハゼAcanthogobius flavimanusは日本の内湾や河口域に生息し,遊漁や漁獲対象として内湾域での水産業に寄与していたが,漁獲量が激減するとともに,高価な魚となっている.本種については産卵生態,初期発生や仔・稚魚の形態については詳細な報告があるものの,生息密度の年変動を比較した報告はほとんどない.本研究では努力量を一定とした釣獲法による定点観測を10年間継続することにより,生息密度の長期的な変動を調査した.2009年から2019年に行った122回(努力量は244時間)の調査で,847個体のマハゼを釣獲した.マハゼのCPUE(単位努力量あたりの捕獲数)は0~31(個体/人/2時間)で,経年変動は見られなかった.一方,CPUEの季節変化は明瞭で,2~5月まではほとんど0であり,6月以降次第に上昇し,8~11月まで8~31の高い値を示した.一部の個体について,鱗の隆起線を観察することにより年齢査定を行った.標準体長93mmの個体の鱗では広帯と狭帯が1組存在したことから0歳魚,標準体長143mmの個体の鱗では広帯と狭帯が2組存在したことから1歳魚と判断された.これにより調査地には2つの年級群が生息していることが確認された.月ごとの体長組成から年級群別の出現情況を推定した結果,0歳年級群は8月頃80mmに成長した個体が釣獲され始め,その後10月から12月頃には120mmに成長した.1歳年級群は8月頃120~130mmであった個体が10月から11月には140~190mmにまで成長した.本研究により,CPUEの経年変化や季節変化,年級群の出現や成長状況が確認されたことから,遊漁者による丁寧な釣果の記録は,魚類モニタリングに有効であることを示した.
ISSN:1881-9559
2424-2101
DOI:10.20745/izu.19.0_65