スピーチエイドの鼻咽腔閉鎖機能賦活効果の生理学的背景 鼻咽腔閉鎖不全に伴う口蓋帆挙筋疲労とスピーチエイドによる疲労抑制

口蓋裂術後鼻咽腔閉鎖不全症例において,スピーチエイドの装着・非装着により発音活動時の口蓋帆挙筋疲労の程度が異なるかを検討した。Bulb-PLP装着時・非装着時において200回以上の/pu/音節の連続表出を命じ,表出開始からの順序に応じた口蓋帆挙筋活動を擬似的な時系列資料として扱い,表出順と筋活動値との問の回帰式を条件ごとに求めて筋活動の時系列変化を調べた。実験は口蓋裂術後鼻咽腔閉鎖不全症例で,Bulb-PLPの装着のもとに言語治療を継続的に受けた4症例を対象にした。その結果,非装着時,装着時ともに,表出回数の増加に対する筋活動値の変化は,低下する場合や増加する場合と様々であった。しかしながら,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本口蓋裂学会雑誌 Vol. 23; no. 4; pp. 273 - 281
Main Authors 野原, 幹司, 和田, 健, 舘村, 卓, 藤田, 義典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口蓋裂学会 30.10.1998
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0386-5185
2186-5701
DOI10.11224/cleftpalate1976.23.4_273

Cover

More Information
Summary:口蓋裂術後鼻咽腔閉鎖不全症例において,スピーチエイドの装着・非装着により発音活動時の口蓋帆挙筋疲労の程度が異なるかを検討した。Bulb-PLP装着時・非装着時において200回以上の/pu/音節の連続表出を命じ,表出開始からの順序に応じた口蓋帆挙筋活動を擬似的な時系列資料として扱い,表出順と筋活動値との問の回帰式を条件ごとに求めて筋活動の時系列変化を調べた。実験は口蓋裂術後鼻咽腔閉鎖不全症例で,Bulb-PLPの装着のもとに言語治療を継続的に受けた4症例を対象にした。その結果,非装着時,装着時ともに,表出回数の増加に対する筋活動値の変化は,低下する場合や増加する場合と様々であった。しかしながら,全ての症例における非装着時の回帰係数の絶対値は装着時よりも大きく,回帰係数の差の検定の結果,4名中3名において係数の差は有意であり,その傾向は装着期間の短い例では顕著でなかった。すなわち,スピーチエイド非装着時の口蓋帆挙活動は,鼻咽腔が良好に閉鎖されている時の筋活動よりも変動が大きく,連続活動によって関連筋が疲労しやすいことを示しており,さらにスピーチエイドの鼻咽腔閉鎖機能賦活効果の背景には,会話等の連続音の表出に鼻咽腔閉鎖機能の関連筋の疲労に対する抑制効果が関与する可能性が示された。
ISSN:0386-5185
2186-5701
DOI:10.11224/cleftpalate1976.23.4_273