老人の排尿障害 外来患者を中心とした診断と治療

老人における排尿障害の診断, 治療および排尿管理の問題点について検討するために, 排尿障害を主訴として泌尿器科を受診した. 65歳以上の老人患者144例 (男性117例, 女性27例) について臨床検討を行った. 排尿障害以外は健康であるか, 比較的身体障害の軽度な外来通院患者を中心として検討を行った. 対象疾患を前立腺肥大症 (44例), 神経因性膀胱 (58例), 不安定膀胱 (42例) の3群に分け, 神経因性膀胱はシストメトリー所見に基づき, 過活動性 (19例), 低活動性 (23例), 正常 (8例), 不明 (8例) に分けた. 基礎疾患, 臨床症状, シストメトリー所見, ウロ...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 79; no. 7; pp. 1153 - 1161
Main Authors 後藤, 百万, 斎藤, 政彦, 小林, 峰生, 近藤, 厚生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 20.07.1988
The Japanese Urological Association
社団法人日本泌尿器科学会
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.79.7_1153

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Summary:老人における排尿障害の診断, 治療および排尿管理の問題点について検討するために, 排尿障害を主訴として泌尿器科を受診した. 65歳以上の老人患者144例 (男性117例, 女性27例) について臨床検討を行った. 排尿障害以外は健康であるか, 比較的身体障害の軽度な外来通院患者を中心として検討を行った. 対象疾患を前立腺肥大症 (44例), 神経因性膀胱 (58例), 不安定膀胱 (42例) の3群に分け, 神経因性膀胱はシストメトリー所見に基づき, 過活動性 (19例), 低活動性 (23例), 正常 (8例), 不明 (8例) に分けた. 基礎疾患, 臨床症状, シストメトリー所見, ウロフローメトリー所見, 残尿率, 薬物治療について, 各疾患別に検討し, 間欠清潔導尿の有用性についても検討を行った. 今回の検討の結果, 前立腺肥大を有する89例中45例に神経因性膀胱や不安定膀胱の膀胱機能異常がみられた. 神経因性膀胱では, 臨床的に明らかな神経学的異常部位と膀胱機能障害の型とは必ずしも理論的に一致しない場合もみられた. さらに, 臨床症状のみから下部尿路機能障害の型を正確に推定することは困難であることも判明した. 以上より, 正確な診断と治療を行うためには, シストメトリー, ウロフローメトリー, 残尿などの他覚的評価が, 必要不可欠と思われた. 治療においては, 30%が外科的治療, 70%が内科的治療を受けた. 清潔間欠導尿は, 内科的治療群のうち32%で採用され, 極めて有用であった.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.79.7_1153