血液透析治療中患者のインプラント周囲炎が起因して下顎骨骨折を生じた1症例

我々は,血液透析治療中患者のインプラント周囲炎が起因して慢性下顎骨骨髄炎から下顎骨骨折を生じた1症例を経験したので,その治療経過の概要と有病者へのインプラント治療の適応について,若干の考察を加えて報告する.症例の概要:患者は透析治療中の69歳女性で,2021年11月に右側顎下部の疼痛と腫脹を主訴に当科に受診した.インプラント治療(上部構造装着)から3年後にインプラント周囲炎を発症し,慢性下顎骨骨髄炎から下顎骨病的骨折に至った.経過:患者は,2018年6月に他院にて下顎右側第一大臼歯欠損部へのインプラント埋入手術を行った.その約3年後,下顎右側臼歯部インプラント周囲粘膜に腫脹と排膿を認めたため,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本口腔インプラント学会誌 Vol. 38; no. 2; pp. 140 - 144
Main Authors 木村 友哉, 安藤 優, 近藤 尚知, 兵頭 瑞樹, 牧野 祥太, 今枝 常晃, 梅村 昌宏, 花井 寛之, 安藤 雅康, 加藤 昂也, 辻 秀明, 錦見 尚曉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本口腔インプラント学会 30.06.2025
日本口腔インプラント学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0914-6695
2187-9117
DOI10.11237/jsoi.38.140

Cover

More Information
Summary:我々は,血液透析治療中患者のインプラント周囲炎が起因して慢性下顎骨骨髄炎から下顎骨骨折を生じた1症例を経験したので,その治療経過の概要と有病者へのインプラント治療の適応について,若干の考察を加えて報告する.症例の概要:患者は透析治療中の69歳女性で,2021年11月に右側顎下部の疼痛と腫脹を主訴に当科に受診した.インプラント治療(上部構造装着)から3年後にインプラント周囲炎を発症し,慢性下顎骨骨髄炎から下顎骨病的骨折に至った.経過:患者は,2018年6月に他院にて下顎右側第一大臼歯欠損部へのインプラント埋入手術を行った.その約3年後,下顎右側臼歯部インプラント周囲粘膜に腫脹と排膿を認めたため,当科に受診となった.パノラマエックス線写真にて,インプラント体周囲部に骨吸収像を認め,排膿部の細胞診にて良性と判定したため慢性下顎骨骨髄炎の診断で,2021年12月に骨髄炎の原因となっている46部のインプラント体を摘出した.しかし,その3か月後に炎症の制御ができず下顎骨骨折を生じた.患者の透析治療中という全身状態の制約もあり積極的な治療は困難であり,経過観察方針となった.考察:透析治療中にインプラント周囲炎を発症し,後に下顎骨骨折を生じた症例であった.今後我々は,インプラント治療後に透析などの全身疾患を生じる場合もあることを考慮し,本症例の経過を念頭においてインプラント治療に臨まねばならない.
ISSN:0914-6695
2187-9117
DOI:10.11237/jsoi.38.140