循環器遺伝子診療の新展開 遺伝子型から臨床へ
分子遺伝学は20世紀後半に飛躍的に発展した学問分野の1つである. 遺伝子工学の進歩に伴って疾患の遺伝子学的背景が次々に明らかにされた. 悪性腫瘍や内分泌代謝領域に比べて解析が遅れていた循環器領域においても, 諸疾患の原因遺伝子が次々に解明されつつある. 遺伝子疾患の診療で重要なのは, 遺伝子異常と疾患としての病型の関連である. 遺伝子学的診断をすることで, 病態の診断や予後予測, 治療法の決定にまで応用される情報が得られることが期待される. 循環器領域で最初に疾患遺伝子が同定されたのは肥大型心筋症である. 現在では肥大型心筋症の多くはサルコメア遺伝子の異常として認識され, ほかの心筋症において...
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Published in | 心臓 Vol. 46; no. 1; p. 3 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2014
日本心臓財団・日本循環器学会 |
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Summary: | 分子遺伝学は20世紀後半に飛躍的に発展した学問分野の1つである. 遺伝子工学の進歩に伴って疾患の遺伝子学的背景が次々に明らかにされた. 悪性腫瘍や内分泌代謝領域に比べて解析が遅れていた循環器領域においても, 諸疾患の原因遺伝子が次々に解明されつつある. 遺伝子疾患の診療で重要なのは, 遺伝子異常と疾患としての病型の関連である. 遺伝子学的診断をすることで, 病態の診断や予後予測, 治療法の決定にまで応用される情報が得られることが期待される. 循環器領域で最初に疾患遺伝子が同定されたのは肥大型心筋症である. 現在では肥大型心筋症の多くはサルコメア遺伝子の異常として認識され, ほかの心筋症においても遺伝子の解析が進んでいる. 2006年に発表されたACC/AHAの心筋症の分類では, 従来の肥大型, 拡張型といった心形態に基づいた疾患分類を排し, 原因による分類を採用した. その中で遺伝性不整脈疾患として知られるBrugada症候群やRomano-Ward症候群なども遺伝性の心筋症に組み入れられたことは, この領域の大きなパラダイムシフトといえる. 血管形成の異常を伴うMarfan症候群の遺伝子異常も次々と明らかにされている. このように遺伝子異常についての研究は大きく進展しているものの, 遺伝子型と表現型(臨床病型)との関連についての研究はまだ端緒についたところといってよい. さらに, 治療への橋渡しは今後の課題である. 比較的容易に遺伝子異常の同定ができるようになり, 臨床現場にも遺伝子情報がもたらされるようになっているが, 現状ではこの情報をどのように診療に反映させるかは模索状態といっても過言ではない. 今回のHEART's Selectionでは, 心筋症, 不整脈, Marfan症候群について遺伝子解析にも臨床にも造詣の深い3氏と遺伝子診療外来での診療にあたる著者に循環器領域における遺伝子診療の最新情報のご提供をいただいた. 循環器疾患における遺伝子解析・診断・治療の進歩と意義, 問題点についてご理解いただき, 診療にも役立てていただければ幸いである. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.46.3 |