がん医療における医療ソーシャルワーカーの役割

がんという病気はいまだにネガティブなイメージを抱かせる疾患であり, 進行をともなうことからくる病状変化や身体機能の喪失, それにともない心理的にも危機的状況に陥る場面が多い. だからこそ, 多くの専門職が協働しながら患者・家族を長期・継続的に支援していくことが, がん領域の医療には求められている. 医療ソーシャルワーカーは, 医療機関の中で利用者の生活を支える視点で援助を行う福祉専門職であり, 対人援助の専門職である. 「生活者としての患者」として抱えるさまざまな問題や「環境の中の個人」の関係性に着目し, クライエント自身の自己効力感が賦活されることを支援する役割を担う. そこには誰もが自分の...

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Published in医療 Vol. 62; no. 10; pp. 558 - 565
Main Author 高田, 由香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 20.10.2008
国立医療学会
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Summary:がんという病気はいまだにネガティブなイメージを抱かせる疾患であり, 進行をともなうことからくる病状変化や身体機能の喪失, それにともない心理的にも危機的状況に陥る場面が多い. だからこそ, 多くの専門職が協働しながら患者・家族を長期・継続的に支援していくことが, がん領域の医療には求められている. 医療ソーシャルワーカーは, 医療機関の中で利用者の生活を支える視点で援助を行う福祉専門職であり, 対人援助の専門職である. 「生活者としての患者」として抱えるさまざまな問題や「環境の中の個人」の関係性に着目し, クライエント自身の自己効力感が賦活されることを支援する役割を担う. そこには誰もが自分の持てる能力や周囲の資源を駆使して主体的に問題解決し自立する力を持っていることへの信頼がある. また多職種チームにおいては, 患者・家族に対する心理・社会的な支援を中心とした役割を担当する. 患者の理解者・代弁者の役割や, 必要な他専門職への引き継ぎや, 患者と医療者との関係調整やコミュニケーションの円滑化のためにも支援を行う役割を担っている. 本稿では, ソーシャルワーカーとしての基本的な視点と, クライエントに対しての役割・チームにおいての役割について述べる.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.62.558