食生活を改善して効果があつた低血圧症の1例

本態性低血圧症の病態を解明し,治療方法を開発することを目的として本研究を行なつた.症例は57才の主婦で,動悸,ふらつき感,意欲低下,不安感などを主訴として入院した. 52才で閉経し, 55才に子宮筋腫の診断で子宮摘出術を受けた.手術後1カ月ごろから主訴が出現した.入院時の現症では血圧は98/54mmHgで低血圧を示した以外に著変はみられなかつた.内分泌学的には, P-LH, P-FSHが異常に高く, estrogenは低値であつた.自律神経機能検査では,アドレナリンに対して過剰の反応がみられ, microvibrationでは速波成分が増加していた.治療前後に立位負荷試験を行なつた結果,治療前...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本内科学会雑誌 Vol. 68; no. 11; pp. 1449 - 1455
Main Authors 中村, 国雄, 高畠, 学, 関本, 博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 1979
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:本態性低血圧症の病態を解明し,治療方法を開発することを目的として本研究を行なつた.症例は57才の主婦で,動悸,ふらつき感,意欲低下,不安感などを主訴として入院した. 52才で閉経し, 55才に子宮筋腫の診断で子宮摘出術を受けた.手術後1カ月ごろから主訴が出現した.入院時の現症では血圧は98/54mmHgで低血圧を示した以外に著変はみられなかつた.内分泌学的には, P-LH, P-FSHが異常に高く, estrogenは低値であつた.自律神経機能検査では,アドレナリンに対して過剰の反応がみられ, microvibrationでは速波成分が増加していた.治療前後に立位負荷試験を行なつた結果,治療前では立位後に拡張期血圧が上昇し,治療後では収縮期圧の減少傾向,脈拍数の増加があつた.またhemoglobin, hematocrit値の増加率が治療後に増加した.血清脂質では,コレステロール, βリポ蛋白の増加率が大きくなつた.尿中アドレナリンは改善後に減少率が大きくなり,ノルアドレナリンでは増加率が大きくなつた. Res-O-Mat T4は減少傾向から増加傾向になつた. P-LHは増加傾向から減少傾向になり, P-FSHはあまり変らなかつた.摂食行動の偏りからくるprotein-calorie malnutritionのために低血圧症を生じたと考えられたので,正しい食生活を詳しく教え,さらにわかつたことを実行させるために,交流分析を応用し治療意欲を高めさせたところ,血圧が上昇し愁訴が少なくなつた.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.68.1449