表在性膀胱癌における再発因子の統計学的解析 Coxの比例ハザードモデルによる再発因子の抽出と重みづけ

表在性膀胱腫瘍の再発に関与する主要な因子を評価するために, 初回治療を施したpTa, pTl症例151例について, その治療時の諸因子と再発までの期間との関係を統計学的に検討した. 検討に用いた因子は性・年齢・膀胱刺激症状・初発症状から受診までの期間・腫瘍発生部位・大きさ・数・形態I (乳頭状か非乳頭状か)・形態II (有茎性か広基性か)・異型度・深達度・喫煙歴の12因子で, Coxの比例ハザードモデルによる多変量解析を用いて再発因子の相対的重要度を評価した. 全症例の1年再発率は27.9%, 3年再発率は44.0%, 5年再発率は51.5%であった. 各因子の5年再発率は, 数 (多発性77...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 78; no. 1; pp. 39 - 49
Main Authors 高士, 宗久, 村瀬, 達良, 三矢, 英輔, 水野, 正一, 浜島, 信之, 青木, 国雄, 大野, 良之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1987
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Summary:表在性膀胱腫瘍の再発に関与する主要な因子を評価するために, 初回治療を施したpTa, pTl症例151例について, その治療時の諸因子と再発までの期間との関係を統計学的に検討した. 検討に用いた因子は性・年齢・膀胱刺激症状・初発症状から受診までの期間・腫瘍発生部位・大きさ・数・形態I (乳頭状か非乳頭状か)・形態II (有茎性か広基性か)・異型度・深達度・喫煙歴の12因子で, Coxの比例ハザードモデルによる多変量解析を用いて再発因子の相対的重要度を評価した. 全症例の1年再発率は27.9%, 3年再発率は44.0%, 5年再発率は51.5%であった. 各因子の5年再発率は, 数 (多発性77.2%: 単発性36.9%, ハザード比 (HR)=3.56), 形態II (広基性60.3%: 有茎性39.4%, HR=2.57), 深達度 (pTl 59.4%: pTa 49.0%, HR=2.05), 年齢 (70歳以上60.1%: 69歳以下49.4%, HR=1.91), 大きさ (1cmをこえる69.1%: 1cm以下37.1%, HR=1.68) であり, これら5因子のカテゴリー間で統計学的に有意差を認めた (: p<0.05, : p<0.001). つぎにCoxのモデルを用い主要な要因をコントロールして, 寄与度の大きい因子を順次選択していくと, 数>大きさ>形態II>喫煙歴>年齢>深達度の順となり, 数・大きさ・形態IIが再発因子として重要であると考えられた. 以上から, とくに初回治療時の多発性・1cmをこえる・広基性の腫瘍に再発の可能性が高いことが確認された. 術後再発予防としての膀胱内注入療法に際してこれらの特徴を考慮することが必要であろう.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.78.1_39