多形膠芽腫から発生した線維肉腫の1症例

症例は58歳女性. 右前頭葉に腫瘍を認めた. 腫瘍は組織学的に中心部が多形膠芽腫でその辺縁は線維肉腫の像を呈していた. gliosarcomaの1例と考え, 組織学的所見を中心にその発生機序について文献学的考察を加えて報告した.「はじめに」脳の間葉系の腫瘍は一般的に稀である. しかし, glioma特にmalignant gliomaに合併してくることがある1)2)3). この場合glioblastoma multiformeとfibrosarcomaの組合わせが多く, gliosarcomaあるいはFeigin tumorとして知られている4). 我々は手術摘出標本でmalignant gl...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 8; no. 3; pp. 285 - 290
Main Authors 那須義功, 調輝男, 崔哲洵, 中條節男, 深井博志, 大元謙治, 守本研二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1982
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ISSN0386-5924
DOI10.11482/kmj-j8(3)285

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Summary:症例は58歳女性. 右前頭葉に腫瘍を認めた. 腫瘍は組織学的に中心部が多形膠芽腫でその辺縁は線維肉腫の像を呈していた. gliosarcomaの1例と考え, 組織学的所見を中心にその発生機序について文献学的考察を加えて報告した.「はじめに」脳の間葉系の腫瘍は一般的に稀である. しかし, glioma特にmalignant gliomaに合併してくることがある1)2)3). この場合glioblastoma multiformeとfibrosarcomaの組合わせが多く, gliosarcomaあるいはFeigin tumorとして知られている4). 我々は手術摘出標本でmalignant gliomaとfibrosarcomaの合併例を経験した. 組織所見を中心に以前の報告例と比較検討し考察を加えて報告する. 症例 患者:58歳, 女性(B20901) 主訴:左下肢脱力, 記銘力障害. 家族歴:昭和56年7月初旬, 車に乗ろうとした時左下肢の脱力に気付いた. その後記銘力の低下を意識し始めた. 同年7月23日, 本院神経内科を受診した. 神経学的に舌の左方偏位, 左片麻痺, 左下肢の感覚低下がみられた. CTにて右前頭葉白質に, 周囲に反応性浮腫を伴う腫瘍を認め, 造影剤にて輪状に増強がみられた. 同年8月19日cystic astrocytomaの診断のもとに本院脳外科で開頭術を施行した. 術中脳表面からの嚢腫部分の穿刺でキサントクロミーな液体約10mlが吸引された. 腫瘍の実質性部分は, 右中前頭回に接する3×2×2cm大の灰白色, やや弾性軟で白質を主体とする発育形態を示し, 周囲との境界は明瞭で軟膜との関連は認められなかった. 脳葉切除をすることなく, 腫瘍を亜全摘した.
ISSN:0386-5924
DOI:10.11482/kmj-j8(3)285