形態学的に骨髄腫細胞との鑑別に苦慮したplasmacytoidな形態を示した膀胱癌の多発骨転移の1例

「抄録」 尿路上皮癌には, 腫瘍細胞が形質細胞に酷似した形態を呈することがある. 今回, 形態学的に骨髄腫細胞との鑑別に苦慮したplasmacytoidな形態を示した膀胱癌の骨髄転移の一例を経験したので報告する. 症例は80歳代男性で, 20XX年10月に蛋白尿と腎機能障害が出現し, 精査にて多発性骨髄腫(IgG-λ), ISS II期と診断され, BD療法(bortezomib+dexamethasone)を開始した. 効果は良好で, 3コース施行後にはVGPR(very good partial response)に到達した. 20XX +1年2月間歇的に認めていた血尿の精査を行い, 細胞...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 44; no. 1; pp. 57 - 64
Main Authors 佐野史典, 横井桃子, 松本誠司, 安井晴之進, 内田圭一, 清水里紗, 廣瀬匡, 竹内麻子, 徳永博俊, 近藤敏範, 松橋佳子, 藤田雅一郎, 宮地禎幸, 和田秀穂, 杉原尚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 2018
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Summary:「抄録」 尿路上皮癌には, 腫瘍細胞が形質細胞に酷似した形態を呈することがある. 今回, 形態学的に骨髄腫細胞との鑑別に苦慮したplasmacytoidな形態を示した膀胱癌の骨髄転移の一例を経験したので報告する. 症例は80歳代男性で, 20XX年10月に蛋白尿と腎機能障害が出現し, 精査にて多発性骨髄腫(IgG-λ), ISS II期と診断され, BD療法(bortezomib+dexamethasone)を開始した. 効果は良好で, 3コース施行後にはVGPR(very good partial response)に到達した. 20XX +1年2月間歇的に認めていた血尿の精査を行い, 細胞診や膀胱鏡検査から膀胱癌の併発を確認した. 骨髄腫治療は中断し, 膀胱癌治療を優先した. PET/CT検査ではリンパ節やその他臓器への転移は認めず, 6月に膀胱全摘術が施行された. 術後は経過良好であったため, 全身状態の回復を待ち, 骨髄腫治療を再開する予定であった. しかし, 9月末頃から腰痛が出現し, 10月には腰痛の増強を認めたため再度PET/CT検査を施行したところ, 多発する骨髄病変を認めた. 骨髄腫の増悪を疑い骨髄検査を施行した. 骨髄穿刺塗沫標本では, 形質細胞様の異形細胞を多数認め, 骨髄腫の増悪を推測させる所見であった. しかし同時に施行された骨髄腫関連検査では, IgGやその他の免疫グロブリンは正常であり, 蛋白分画や免疫固定法でもM蛋白は検出されなかった. 骨髄生検の病理組織学的検査の結果, 形質細胞様の異形細胞は尿路上皮系の腫瘍細胞であり, 膀胱癌の骨転移と診断された. PET/CT検査での多発骨髄病変は, 多発性骨髄腫の増悪ではなく, 膀胱癌の多発骨転移であった. 膀胱全摘後の再発は, 遠隔転移が20~50%と遠隔転移が多く, 遠隔転移部位として骨, リンパ節, 肺, 肝の順に多いと報告されている. そのため, 骨髄塗抹標本検鏡の際, 遭遇する可能性があり, 骨髄腫細胞と見誤らないためには, 免疫染色を含めた組織学的な検討, 血清・尿の蛋白解析が必須と考えられた.
ISSN:0386-5924
DOI:10.11482/kmj-j44(1)57