Fonsecaea Monophoraによるクロモブラストミコーシス

クロモブラストミコーシス(CBM)の主要な原因菌種Fonsecaea属は,近年分子系統解析により再検討され,F. pedorosoi, F. monophora, F. nubicaの3菌種が提唱されている.今回,その原因菌の形態学的同定が困難であったが,系統解析によりF. monophoraと同定することができた慢性重症型CBMの症例を報告する.患者は55歳のフィリピン出身の男性.ココナッツ農園で働いていた1973年ごろ,左下腿に小紅斑が出現.1999年に下腿部から大腿部にかけて皮疹が多発し,同年から2005年まで母国で治療し略治.2005年来日後,下腿の皮疹が再燃し,イトラコナゾールの内服...

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Published inMedical Mycology Journal Vol. 52; no. 3; pp. 255 - 260
Main Authors 矢口, 貴志, 西村, 和子, 菅谷, 圭子, 杉山, 由華, 亀井, 克彦, 鈴木, 陽子, 戸倉, 新樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医真菌学会 2011
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ISSN2185-6486
2186-165X
DOI10.3314/mmj.52.255

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Summary:クロモブラストミコーシス(CBM)の主要な原因菌種Fonsecaea属は,近年分子系統解析により再検討され,F. pedorosoi, F. monophora, F. nubicaの3菌種が提唱されている.今回,その原因菌の形態学的同定が困難であったが,系統解析によりF. monophoraと同定することができた慢性重症型CBMの症例を報告する.患者は55歳のフィリピン出身の男性.ココナッツ農園で働いていた1973年ごろ,左下腿に小紅斑が出現.1999年に下腿部から大腿部にかけて皮疹が多発し,同年から2005年まで母国で治療し略治.2005年来日後,下腿の皮疹が再燃し,イトラコナゾールの内服を再開したが悪化してきたため当科を受診.2008年10月初診時,左下腿部に瘢痕型病変と周囲に腫瘤型病変を伴っていた.その病変の上部から大腿にかけて,多数の斑状瘢痕を認めた.腫瘤性病変からmuriform cellを確認,黒色真菌を分離した.集落は,はじめ炭粉状,後に短絨毛様となった.本分離株は顕微鏡所見による菌種同定が困難なため,リボソームRNA遺伝子internal transcribed spacer領域の塩基配列を解析し,F. monophora(DDBJ accession number AB566420)と同定した.治療はボリコナゾール内服とカイロによる温熱療法を併用し,6ヶ月後には腫瘤性病変は消退し,1年6ヶ月で瘢痕様紅斑を残し内服治療を終了した.瘢痕型は薬剤の到達が難しいため再発しやすく,治癒判定も難しいため,今後も経過観察が必要である.
ISSN:2185-6486
2186-165X
DOI:10.3314/mmj.52.255