地域医療機関より紹介搬入となったくも膜下出血の現状と問題点

「はじめに」 近年全国的に問題となっている医師不足, 医師の偏在化によって, 脳神経外科施設も集約化の傾向にある. それに伴い, 破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血の症例も, 脳神経外科施設以外の近隣医療機関を経て, 専門的治療のため脳神経外科施設に搬送される症例が増加していくものと考えられる. また地域によっては長距離の転院搬送を余儀なくされる症例も増加していく可能性もある. われわれの施設は, 北海道函館市に位置するが, その診療範囲は渡島地域全域にわたる. 渡島は, 北海道の南西部, 渡島半島に位置し, 総面積は3,936km2で全道の約4.7%を占めるにすぎないが, 埼玉県や長崎県の広さに...

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Published in脳卒中の外科 Vol. 38; no. 6; pp. 397 - 402
Main Authors 妹尾, 誠, 森脇, 寛, 春原, 匡, 久保田, 司, 香城, 孝麿, 山崎, 貴明, 嶋崎, 光哲, 佐々木, 雄彦, 西谷, 幹雄, 佐藤, 司, 中西, 尚史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会 30.11.2010
日本脳卒中の外科学会
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ISSN0914-5508
1880-4683
DOI10.2335/scs.38.397

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Summary:「はじめに」 近年全国的に問題となっている医師不足, 医師の偏在化によって, 脳神経外科施設も集約化の傾向にある. それに伴い, 破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血の症例も, 脳神経外科施設以外の近隣医療機関を経て, 専門的治療のため脳神経外科施設に搬送される症例が増加していくものと考えられる. また地域によっては長距離の転院搬送を余儀なくされる症例も増加していく可能性もある. われわれの施設は, 北海道函館市に位置するが, その診療範囲は渡島地域全域にわたる. 渡島は, 北海道の南西部, 渡島半島に位置し, 総面積は3,936km2で全道の約4.7%を占めるにすぎないが, 埼玉県や長崎県の広さに匹敵する(Fig. 1). 背景人口は約45万人であり, そのうち約30万人は函館市に集中し, またくも膜下出血に対し専門的治療が可能な脳神経外科施設も函館市内に集中している. 一方で背景人口15万人を抱える函館市以外の地域では, くも膜下出血に対し専門的加療が可能な脳神経外科施設がないため, その地域において発症したくも膜下出血の症例は, 近隣の地域医療機関の受診, 初期搬送ののち, 専門的治療のため当施設を含めた函館市内への長距離の転院搬送が余儀なくされている現状がある.
ISSN:0914-5508
1880-4683
DOI:10.2335/scs.38.397