高ナトリウム血症を呈した2症例

従来の報告によれば,持続性高Na血症は,そのほとんどが中枢神経系に何らかの病変を有するが,その発現機序は必ずしも明瞭でない.われわれは66才女性, 37才女性の持続性高Na血症2例を経験した.いずれも,多飲,多尿の尿崩症症状は明らかでなかつたが,水制限試験時血中ADH測定値,低Na液投与に抗する高Na血症の持続と尿量の増加,第1例においてはPitressin投与による改善の経過より見て尿崩症と診断された.剖検上,第1例においては下垂体後葉慢性炎症性変化を,また第2例においては腫大せる下垂体前葉嫌色素細胞腫と同腫瘍による視床下部圧迫性変化をみとめ臨床診断に符合する所見であつた.多尿,多飲が著明で...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本内科学会雑誌 Vol. 58; no. 3; pp. 219 - 224
Main Authors 中尾, 喜久, 斉藤, 寿一, 吉田, 尚, 菊池, 方利, 倉持, 衛夫, 宇尾野, 公義, 森田, 豊彦, 高梨, 利一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 1969
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:従来の報告によれば,持続性高Na血症は,そのほとんどが中枢神経系に何らかの病変を有するが,その発現機序は必ずしも明瞭でない.われわれは66才女性, 37才女性の持続性高Na血症2例を経験した.いずれも,多飲,多尿の尿崩症症状は明らかでなかつたが,水制限試験時血中ADH測定値,低Na液投与に抗する高Na血症の持続と尿量の増加,第1例においてはPitressin投与による改善の経過より見て尿崩症と診断された.剖検上,第1例においては下垂体後葉慢性炎症性変化を,また第2例においては腫大せる下垂体前葉嫌色素細胞腫と同腫瘍による視床下部圧迫性変化をみとめ臨床診断に符合する所見であつた.多尿,多飲が著明でない中枢神経系疾患における高Na血症の成因には,潜在性尿崩症が重要であることを示唆している.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.58.219