生体腎移植50例の検討 生存率の向上について

1973年9月より1980年7月までに社会保険中京病院で行つた生体腎移植50例を対象として臨床的検討をした. 移植を開始した初期の頃, 免疫抑制療法による合併症と死亡例が多かつた為, 1976年より, 移植後の免疫抑制剤の使用方法に基準を設け, それ以後の症例ではその基準に合うように免疫抑制を行つた. その骨子は免疫抑制剤を少量に抑えるということであり, 特に拒絶反応の治療に対して巌格な基準を設けた. 検討は1975年12月までの特に基準を設けずに行つた症例20症例と以後の症例30症例を比較した. 検討項目は, 1) 患者生存率, 2) 移植腎生着率, 3) 拒絶反応の発症頻度, 4) 死亡症...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 74; no. 5; pp. 765 - 769
Main Authors 大島, 伸一, 小野, 佳成, 絹川, 常郎, 松浦, 治, 平林, 聡, 竹内, 宣久, 小川, 洋史, 藤田, 民夫, 浅野, 晴好, 梅田, 俊一, 杉山, 敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 01.05.1983
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Summary:1973年9月より1980年7月までに社会保険中京病院で行つた生体腎移植50例を対象として臨床的検討をした. 移植を開始した初期の頃, 免疫抑制療法による合併症と死亡例が多かつた為, 1976年より, 移植後の免疫抑制剤の使用方法に基準を設け, それ以後の症例ではその基準に合うように免疫抑制を行つた. その骨子は免疫抑制剤を少量に抑えるということであり, 特に拒絶反応の治療に対して巌格な基準を設けた. 検討は1975年12月までの特に基準を設けずに行つた症例20症例と以後の症例30症例を比較した. 検討項目は, 1) 患者生存率, 2) 移植腎生着率, 3) 拒絶反応の発症頻度, 4) 死亡症例, 5) 合併症の頻度, 等である. 尚, 初期の20症例をI群, 以後の30症例をII群とした. 結果は以下のとおりである. 1) 患者生存率では, 1年生存率がI群で70%, II群で97%, 3年生存率がI群で55%, II群で92%と有意に向上した. 2) 移植腎生着率では, 1年生着率がI群で65%, II群で70%, 3年生着率がI群で45%, II群で62%であり大きな差を認めなかつた. 3) 急性拒絶反応の発症頻度に差は認められなかつた. 4) 感染を原因とした死亡症例は, I群が5例, II群が2例であつた. 5) 主な合併症中, 感染の頻度は, 移植後3カ月以内でみるとI群で14例に41回, II群で11例に15回であり, II群で明らかに減少した.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.74.5_765