脳梗塞急性期における血中組織因子 (tissue factor) およびその阻害因子 (tissue factor pathway inhibitor) の変動
脳梗塞急性期の外因系凝固を検討する目的で, 急性期第1病日と第7病日のラクナ梗塞群, アテローム血栓性脳梗塞群, 心原性塞栓症群の組織因子 (tissue factor;TF) とその阻害因子 (tissue factor pathway inhibitor;TFPI) の血中の変動をELISA法で測定し, 年齢を対応させた健常者の対照群と比較検討した.また, 血管内皮細胞障害の指標の一つであるトロンボモジュリン (TM) および凝固亢進状態を反映するトロンビン・アンチトロンビンIII複合体 (TAT) やプロトロンビン時間 (PT) の変動から臨床的意義を検討した. ラクナ梗塞群とアテローム...
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Published in | 脳卒中 Vol. 19; no. 3; pp. 203 - 211 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脳卒中学会
1997
日本脳卒中学会 |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0912-0726 1883-1923 |
DOI | 10.3995/jstroke.19.203 |
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Summary: | 脳梗塞急性期の外因系凝固を検討する目的で, 急性期第1病日と第7病日のラクナ梗塞群, アテローム血栓性脳梗塞群, 心原性塞栓症群の組織因子 (tissue factor;TF) とその阻害因子 (tissue factor pathway inhibitor;TFPI) の血中の変動をELISA法で測定し, 年齢を対応させた健常者の対照群と比較検討した.また, 血管内皮細胞障害の指標の一つであるトロンボモジュリン (TM) および凝固亢進状態を反映するトロンビン・アンチトロンビンIII複合体 (TAT) やプロトロンビン時間 (PT) の変動から臨床的意義を検討した. ラクナ梗塞群とアテローム血栓性脳梗塞群のTFは対照群に比し, 第1病日と第7病日ともに有意な低値を示したが, TFPIは差を認めなかった.一方, 心原性脳塞栓症群のTFPIは対照群に比し高値を示した. 各群の血中TMは健常範囲内であったが, アテローム血栓性脳梗塞群のTFと相関が見られ, 血管内皮細胞障害による可能性が示唆された.TATとTFまたはTFPIの相関関係は認められなかったが, ラクナ梗塞群のPTとTFとの間に相関が認められた.このことはTFやTFPIがトロンビン生成以前の外因系凝固作動初期の状態を示している可能性があり, 両者の測定は急性期脳梗塞の各種病型の鑑別や凝固状態把握のために有用であると考えられた. |
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ISSN: | 0912-0726 1883-1923 |
DOI: | 10.3995/jstroke.19.203 |