職務複雑性と従業員の満足度および内的モティベーションとの関係性

本研究は, 組織体従業員によって認知された職務複雑性 (多様性, 自律性, フィードバック, 役割明瞭性) が, 彼らの職務満足度および内的モティベーションといかに関係しているかを検討したものである。 被験者は, 鉄道輸送を集中制御する職務に従事する325名の男子従業員であった。従来の研究の総括および理論的考察を基礎に, 三つの仮説を設定し, それを検討・吟味した。 仮説1 各職務複雑性次元は, 外的満足度 (たとえば職場での人間関係) より内的満足度 (能力発揮, 達成感, 能力を伸ばす機会) と強く関係するであろう。この仮説は, 自律性, フィードバック, そして役割明瞭性なる複雑性次元に...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in実験社会心理学研究 Vol. 17; no. 1; pp. 22 - 29
Main Author 古川, 久敬
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本グループ・ダイナミックス学会 1977
Online AccessGet full text
ISSN0387-7973
1348-6276
DOI10.2130/jjesp.17.22

Cover

More Information
Summary:本研究は, 組織体従業員によって認知された職務複雑性 (多様性, 自律性, フィードバック, 役割明瞭性) が, 彼らの職務満足度および内的モティベーションといかに関係しているかを検討したものである。 被験者は, 鉄道輸送を集中制御する職務に従事する325名の男子従業員であった。従来の研究の総括および理論的考察を基礎に, 三つの仮説を設定し, それを検討・吟味した。 仮説1 各職務複雑性次元は, 外的満足度 (たとえば職場での人間関係) より内的満足度 (能力発揮, 達成感, 能力を伸ばす機会) と強く関係するであろう。この仮説は, 自律性, フィードバック, そして役割明瞭性なる複雑性次元において支持された。 仮説2 各職務複雑性次元と満足度との関係は, 高次欲求の充足に強く希求した (高欲求水準群) 被験者においてより強いであろう。結果は, 個人特性 (欲求水準) の媒介的効果を裏づけていた。すなわち, 職務複雑性と満足度 (ことに内的満足度) との相関係数は, 高欲求水準群において正の方向でより大きかった。 仮説3 被験者の内的モティベーションは複雑性次元よりも期待認知と強く関係するであろう。内的モティベーションと期待認知および複雑性次元との相関は, それぞれ0.66, 0.26であった。これら二つの相関値の差は統計的な有意性をもっていた (P<. 01)。 本研究の結果は二つの重要な示唆をしている。ひとつは, 組織体従業員の内的モティベーションを規定する主たる変数が, 期待理論でいう期待認知であること。他のひとつは, 職務充実プログラムの展開法およびその効果性についてである。この二点について議論がなされた。 最後に, 今後の研究課題について言及した。
ISSN:0387-7973
1348-6276
DOI:10.2130/jjesp.17.22