歯の欠損が高齢者の生活の満足感に及ぼす影響について 広島県呉市在住高齢者に対するアンケート調査より
高齢化社会を迎えるなか, 歯の保存や補綴が高齢者のQOL向上に果たす役割を明確にしておくことが重要となってきた。今回, 広島県呉市に在住する65歳以上の高齢者3, 880名を対象に, 生活状況および口腔内状態に関するアンケート調査を行い, 歯の欠損が生活にどのような影響を及ぼすかを検討した。有効回答は, 男性1, 502名 (平均年齢73歳), 女性2, 288名 (平均年齢75歳) の計3, 790名であった。残存歯数は, 20歯以上残存している者が885名, 10~19歯 (10歯以上) が919名, 1~9歯 (5歯程度) が842名, 無歯顎者は1, 144名であった。義歯装着率は,...
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Published in | 老年歯科医学 Vol. 11; no. 3; pp. 174 - 180 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年歯科医学会
31.03.1997
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Subjects | |
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ISSN | 0914-3866 1884-7323 |
DOI | 10.11259/jsg1987.11.174 |
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Summary: | 高齢化社会を迎えるなか, 歯の保存や補綴が高齢者のQOL向上に果たす役割を明確にしておくことが重要となってきた。今回, 広島県呉市に在住する65歳以上の高齢者3, 880名を対象に, 生活状況および口腔内状態に関するアンケート調査を行い, 歯の欠損が生活にどのような影響を及ぼすかを検討した。有効回答は, 男性1, 502名 (平均年齢73歳), 女性2, 288名 (平均年齢75歳) の計3, 790名であった。残存歯数は, 20歯以上残存している者が885名, 10~19歯 (10歯以上) が919名, 1~9歯 (5歯程度) が842名, 無歯顎者は1, 144名であった。義歯装着率は, 10歯以上で79%, 5歯程度で86%, 無歯顎者では96%であった。 QOLを評価するための指標として用いた生活の満足感は, 残存歯数が少ない者で不満と回答する者が有意に多かった。生活の満足感に有意な影響を及ぼす項目は, 食生活, 生きがい, 経済的不安, 気分, 人間関係, 社会の一員の6項目であった。これらの項目が生活の満足感に及ぼす影響の大きさは, 20歯以上の者では第3位であった食生活が, 20歯未満の者では第1位であった。一方, 義歯装着者と未装着者との間には, 生活の満足感に有意差はなかったが, 生活の満足感に影響を及ぼす項目では, 義歯装着者で最も強い相関を示した食生活が, 未装着者では有意ではなかった。本研究の結果, 残存歯数により生活の満足感が変化することが示唆された。 |
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ISSN: | 0914-3866 1884-7323 |
DOI: | 10.11259/jsg1987.11.174 |