生体臓器移植ドナー候補者に対する精神医学的評価 肝移植患者の心理社会的長期経過調査より

生体臓器移植のドナー候補者に対する精神科診察は,「臓器提供の意思確認」と「心理状態の評価」の2つの役割があると考えられる。意思確認には,精神状態を評価することによる「意思決定能力の判定」,移植医療についての「理解度の評価」,臓器提供についての「強制の有無の確認」の三段階が存在する。一方,筆者らは成人間の生体肝移植レシピエント40人およびドナー30人の心理社会的長期経過の調査を施行したところ,ドナーの心理社会的経過はレシピエントの心身の状態に左右され,ドナーがレシピエントの配偶者である場合に心理社会的により安定しているというデータが得られた。ドナーの術前の精神状態は術後の心理社会的状態に大きな影...

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Published in総合病院精神医学 Vol. 22; no. 4; pp. 331 - 337
Main Authors 村井, 俊哉, 野間, 俊一, 上原, 美奈子, 林, 晶子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本総合病院精神医学会 15.10.2010
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ISSN0915-5872
2186-4810
DOI10.11258/jjghp.22.331

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Summary:生体臓器移植のドナー候補者に対する精神科診察は,「臓器提供の意思確認」と「心理状態の評価」の2つの役割があると考えられる。意思確認には,精神状態を評価することによる「意思決定能力の判定」,移植医療についての「理解度の評価」,臓器提供についての「強制の有無の確認」の三段階が存在する。一方,筆者らは成人間の生体肝移植レシピエント40人およびドナー30人の心理社会的長期経過の調査を施行したところ,ドナーの心理社会的経過はレシピエントの心身の状態に左右され,ドナーがレシピエントの配偶者である場合に心理社会的により安定しているというデータが得られた。ドナーの術前の精神状態は術後の心理社会的状態に大きな影響を与えていなかった。ドナー候補者に対する精神科診察では,レシピエントとの関係に留意してドナー選定過程を詳細に聴取する必要があると思われる。
ISSN:0915-5872
2186-4810
DOI:10.11258/jjghp.22.331